その昔、1990年代前半頃の話です。
年老いた珈琲豆焙煎屋が脱サラして、自家焙煎コーヒー豆小売商売に足を踏み入れたのは、1992年の春のことです。
その頃の焙煎コーヒー豆は高級品というイメージが強くて、百貨店のコーヒー豆売り場はもちろんのこと、スーパーマーケットでも相当に高級な価格で販売されていました。
その時代、自家焙煎したコーヒー豆を圧倒的な低価格設定(浸透価格)で小売販売している店が、少数ですが存在していて繁盛していました。
例えば、関西では、京都市の出町輸入食品や大阪市の有本珈琲問屋、それに西宮市のグレート珈琲さんなどです。
年老いた珈琲豆焙煎屋は、エカワ珈琲店という屋号で、夫婦2人だけで小さな自家焙煎コーヒー豆小売店を営んでいます。
そのエカワ珈琲店の自家焙煎コーヒー豆価格設定方法ですが、自家焙煎コーヒー豆小売商売を開始した頃は、浸透価格(低価格販売)の値付け設定を採用していました。
人の倍働いて人並みの収入を得るという、その頃としては、一番手っ取り早くて安易な商売の手法を選択したわけです。
1990年代の初め頃、ちょうど家庭用焙煎コーヒー豆市場が成長期に入っていて、低価格での販売効果は抜群でした。
新聞の折込チラシで宣伝するだけで、全く名前の知られていないエカワ珈琲店に多数のお客さんが来店してくれたわけですから。
最初の2年~3年、店舗での自家焙煎コーヒー豆小売は順調に業績を伸ばしていたのですが、エカワ珈琲店の自家焙煎コーヒー豆小売価格よりも、スーパーマーケットなどで売られている焙煎コーヒー豆の販売価格が安くなった段階で、エカワ珈琲店の自家焙煎コーヒー豆売上増加は止まってしまって、店舗販売については下降線をたどり始めました。1990年代中頃の話です。
自家焙煎コーヒー豆小売店を開業するについて相当な設備投資をしていたので、普通は、開業に要した費用を回収できるくらいの価格、ようするに、上澄み吸収価格での価格設定が必要だったのですが、目の前の繁盛に目がくらんで、低価格販売を選択してしまいました。その後遺症で、何年も何年も資金繰りに苦しんだわけです。
1990年代中頃からは、オフィスコーヒーサービス市場に依存することで、店舗販売の停滞を補って余りあるだけの売り上げを確保していたのですが、こちらの方も、浸透価格での販売でしたから貧乏暇なしの状態は相変わらずでした。
オフィスコーヒーサービス市場の場合、コーヒーメーカーを無償貸与して、焙煎コーヒー豆(ほとんどが焙煎コーヒー粉)を購入してもらうということで、とりこ価格的な価格設定が必要なのですが、零細な個人事業者ではそうもできず、店舗販売同様の低価格販売を選択していました。
オフィスコーヒーサービス市場が好調だった期間も、それほど長くは続かず、大手のオフィスコーヒーサービス専門会社が進出してくると、瞬く間に、市場から弾き飛ばされてしまいました。
大手オフィスコーヒーサービス専門会社の販売手法は、無料の試飲期間を設けて、契約書を作成して、無料の試飲期間終了後は、契約期間中焙煎コーヒー豆を定期的に契約額以上購入してもらうというもので、マーケティングと営業力をミックスした人海戦術を駆使する販売手法だったわけですが、地方都市では効果抜群だったようです。
そんなこんなで、大体30年自家焙煎コーヒー豆小売専門店を営んでいて、自家焙煎コーヒー豆の価格戦略でも、いろいろと失敗を重ねてきたと反省しています。
十分な利益を確保できなければ、個人店の場合、商売を継続するのが難しいわけですから、価格競争は絶対に避けるべきだと、60歳を超えた頃から理解できるようになりました。
60歳を超えて、体力的に弱ってきて、我武者羅に働くことができなくなって、やっと理解できるようになったわけです。もう少し早い時期に理解できていたら、と悔しさがこみ上げてきます。
価格設定の方法として、店側の売りたい値段で価格を設定するコストプラス法と、お客さんに買ってもらえる値段で価格を設定する市場価格基準法が知られています。
個人零細事業者の場合、市場価格基準法を採用すれば、貧乏暇なしの状態になってしまって、生産性がものすごく悪くなってしまいます。
年老いた珈琲豆焙煎屋のこれまでの経験から、コストプラス法で価格設定をするべきだと思っています。
スモールバッチロースターであるエカワ珈琲店の自家焙煎コーヒー豆と、大量生産したレギュラーコーヒーと呼ばれる焙煎コーヒー豆とでは、同じ焙煎したコーヒー豆であっても全く違ったタイプの商品ですから。
店舗販売での価格設定ですが、浸透価格で販売していたその昔も、上澄み吸収価格で値付けしている現在(2021年)も、段階価格を採用しています。
その昔は、100gが150円~500円くらい、2021年の現在は、400円~700円くらいの間で50円くぎり(大体が100円くぎり)の設定をしています。
例えば、100gが400円、500円というように・・・。
398円・490円というように、お買い得感のある端数価格(はすうかかく)の設定にしようと考えたこともあるのですが、集計・整理のわずらわしさを考えると、どうしても採用する気持ちになれません。
ですから、区切の良い50円単位・100円単位の段階価格での値付けを採用しています。
エカワ珈琲店の自家焙煎コーヒー豆ですが、和歌山市の店舗で購入できなくてもアマゾンマーケットプレイスに出品しているので、全国どこからでも購入して頂けます。
アマゾンマーケットプレイスを通信販売のカートとして利用しているだけで、自家焙煎コーヒー豆は、和歌山市の店舗から直接お客様に煎りたてを発送しています。