年老いた珈琲豆焙煎屋のブログ

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20世紀版、エカワ珈琲店の珈琲読本、(第11章)焙煎コーヒー豆の保存と粉砕

ひとたびコーヒー豆を焙煎すると、焙煎したコーヒー豆の新鮮な香りと味を保つために適切な保管が必要となります。

涼しくて乾燥していて、それにプラスしてできるだけ暗い場所にて、気密性の高い密閉容器に入れて保管するのが理想的です。

焙煎したコーヒー豆の風味・香味を劣化させる原因ですが、1番に空気、2番目が湿度、3番目が熱、そして、4番目が光という順番になっているようです。

 

 

コーヒー豆のグラインド(粉砕)は、コーヒーの淹れ方に影響を与える最初のステップだとされています。

コーヒー豆の挽き具合として、Coarse(コース/粗挽き)、Medium(ミディアム/中挽き)、Fine(ファイン/細挽き)、Extra fine(エキストラファイン/極細挽き)、Turkish(ターキッシュ/パウダー状態)の5段階が知られています。

しかし、筆者(年老いた珈琲豆焙煎屋)にとって重要なのは、「粗挽き」、「中挽き」、「細挽き」の三段階です。

 

【目次】

 

【1】焙煎コーヒー豆の保存

焙煎コーヒー豆の保存状態を左右しているのは、温度・湿度・酸素・光の四つの要素だとされています。

それらを、できるだけ低く抑える方法で保存するのが、最良の保存方法だと考えられています。

焙煎コーヒー豆の最適な保存方法は、冷暗所での常温保存だと思います。

焙煎コーヒー豆の保存には、専用のビンまたは缶を使用するのが一般的です。

ビンや缶は、一度洗剤を使ってよく水洗いしたあと乾燥させ、少量の焙煎コーヒー豆を入れて、コーヒーの香りをなじませます。

注意しなければならないのは、ビンや缶につく嫌な臭いです。

これは焙煎コーヒー豆から出る油性分が容器の内部に付着して、長い間に微生物の影響などで独特の匂いをもつようになったものです。

これを防ぐため、ビンや缶を、ときどき洗浄する必要があると考えています。

焙煎コーヒー豆は、ほかの食品などの匂いを吸着しやすい性質をもっています。

したがって、焙煎コーヒー豆と匂いをもっている食品などを接触させないように、充分注意して保存する必要があると考えています。

湿度や気温の高い夏場、焙煎コーヒー豆を冷蔵庫の野菜室で保存するのもベターなのかもしれませんが、焙煎コーヒー豆が、他の食品のニオイを吸収して使い物にならなくなることもあるので、冷蔵庫での保存については、相当な注意が必要だと思っています。

また、タバコ・香水・燃料類など、室内の空気を介しての匂い、あるいはコーヒーを扱う人の手の油分や化粧品類からの匂いにも注意する必要があります。

 

【2】パッケージング(袋詰め)

自家焙煎コーヒー豆の小売販売では、普通、紙製やポリエチレン製の袋に焙煎したコーヒー豆を入れて販売しています。

この場合、袋の中に空気が侵入するので、長期間の保管には向いていませんが、煎りたて新鮮な焙煎コーヒー豆を、長くても1か月以内に消費することを前提として小売販売しているわけですから、それが最適な販売方法だと思っています。

しかし、賞味期限が長い(焙煎後1年くらいの賞味期限がある)、大量生産・大量流通のレギュラーコーヒー豆については、長期間保存することを前提とした包装が必要となります。

その理想的なパッケージ方法は、バルプ弁付きの真空包装袋でパーケージする方法だと言われています。

この方法だと、外気からの空気の侵入を防ぐことができると言われています。

ちなみに、1931年に、真空の缶に焙煎したコーヒー豆を詰めた商品が発売されました。

缶詰め内の空気は99%除去されているので、缶が開けられるまで缶詰内のコーヒー豆(粉)は無期限に保管できると、当時は考えられていたようです。

 

【3】焙煎コーヒー豆とシェルフライフ

焙煎したコーヒー豆は、酸素や熱や光と接触することで、日時の経過とともに酸化変質して劣化して行きます。

ですから、酸素・熱・光との接触を遮断して、保存に最適な環境を維持することができれば、焙煎コーヒー豆のシェルフライフ(貯蔵寿命)を延長させることができるのかもしれません。

英語版のWikipedia-Coffee(2010年) を読めば、焙煎コーヒー豆を空気を含んだ状態で保存すれば、芳香成分を約2週間くらい最良な状態で保つことができて、コーヒー豆をグラインド(挽いて粉に)すれば、約15分くらいしか芳香成分を最良な状態に保つことができないと書いてあります。

筆者は、焙煎方法と保存の方法が良好ならば、焙煎コーヒー豆なら3週間~4週間、グラインド(粉に挽いて)後なら1週間(もしかしたら、2日から3日)くらい、淹れたコーヒーの液体で2時間~3時間くらいなら(自然冷却して涼しい場所で自然保管する場合に限りますが)、それほど極端に香味は劣化しないと考えています。

焙煎したコーヒー豆や、それをグラインド(粉に挽いた)したコーヒー粉は、必ず日時の経過とともに劣化(ステイル)していくと思っていますが、特別な保存方法(or包装方法)を採用することで劣化(ステイル)スピードを遅らせることができるとされています。

空気を含んだ自然の状態で保存・包装する自然包装(含気包装)ではなくて、酸素との接触を遮断する包装・保存技術として最初に登場したのが真空包装の技術でした。

しかしながら、焙煎したコーヒー豆は、焙煎後も二酸化炭素を放出し続けています。

ある程度の期間、二酸化炭素ガスを放出させてガス抜きしてからでなければ、二酸化炭素ガスの圧力でフィルム包材や缶が膨張・変形してしまいますから、真空包装することができません。

そのため、ある程度の期間放置しておいてから真空包装するわけですが、そのある程度の期間の間に、二酸化炭素ガスと一緒に有効な香気成分も放出してしまいます。

それを防いで、できるだけ放置期間を短くして真空包装する方法として、発生する二酸化炭素を外部に放出して内部圧力を軽減させても、外部から空気が侵入するのを防止できる特殊バルプを取り付ける方法が考案されています。

しかし、コーヒー豆自家焙煎店が販売する「煎りたて、新鮮な焙煎コーヒー豆」の場合、自然派のクラフト(手造りの)焙煎コーヒー豆ですから、空気を含んだ自然の状態で保存・包装する自然包装(含気包装)が最も適していると筆者は考えています。

冷却や冷凍は、焙煎コーヒー豆の劣化プロセスを遅らせると考えられています。

焙煎後、冷蔵庫や冷凍庫で焙煎コーヒー豆を保存すれば、2ヶ月くらいまでなら鮮度をある程度維持できるかもしれませんが、異質なニオイの吸収や乾燥しすぎて酸化が促進される可能性も高いと筆者は考えています。

 

【4】焙煎コーヒー豆の熟成(エイジング)と劣化(ステーリング)

焙煎したコーヒー豆は、時間の経過とともに香りを失っていきます。

理由は、焙煎によって生成した揮発性の香り成分が空気中に散逸するからです。

焙煎直後のコーヒー豆には、相当量(焙煎中に発生した二酸化炭素ガスの半分)の二酸化炭素ガスが含まれていて、時間の経過とともに、その二酸化炭素ガスがコーヒー豆から出て行きます。

その二酸化炭素ガスと一緒に、揮発性の香り成分も、コーヒー豆から出て行きます。

この現象を、ステーリングと呼んでいます。

ステーリング(劣化)について、『序説珈琲学』には、揮発性の香り物質が、空気中からの酸素・水分の浸入によってコーヒー豆の組織から追い出されて、同時に酸化が進行して、本来の香味を失うことと書いてあります。

焙煎コーヒー豆のまま保存するよりも、粉に粉砕して保存するほうが、香りの退化現象であるステーリングの発生度合いが大きくなります。

常温保存の焙煎コーヒー豆なら、約1週間~2週間くらいからステーリングが発生して、徐々に香りが減少して行くと言われています。

このステーリング現象ですが、焙煎コーヒー豆をグラインド(粉砕)すれば、そのスピードが速くなります。

食品の発酵と腐敗は紙一重というように、焙煎コーヒー豆の熟成(エイジング/Aging)と劣化(ステーリング/Staling)も紙一重なのだと思っています。

焙煎コーヒー豆の熟成(エイジング/Aging)は食品の発酵に、焙煎コーヒー豆の劣化(ステーリング/Staling)は食品の腐敗に良く似た現象なのだと思っています。

焙煎コーヒー豆の熟成(エイジング/Aging)現象は、時間の経過とともに、焙煎コーヒー豆の香りや風味が、自然現象による化学的・物理的プロセスによって最適化して行く現象で、焙煎コーヒー豆に含まれている香味成分の移動現象だと、筆者は考えています。

焙煎コーヒー豆の劣化(ステーリング/Staling)現象は、時間の経過とともに、焙煎コーヒー豆の香りや風味を腐敗させるわけではありませんが、減少させて行く現象なのだと思っています。

 

【5】コーヒーミル

コーヒーミルには、手動式と電動式があります。

手動式ミルは、趣味的・装飾品的要素が強くて、何人分かのコーヒー豆を挽く場合、手間がかかって不向きです。

電動式ミルには、臼歯で砕く方式のグラインドミルと、カッテイング方式でコーヒー豆をカットして粉砕するカッティングミルがあります。

グラインドミルでコーヒー豆をすりつぶすように挽くと、コーヒー豆が加熱されるので、コーヒー豆の成分が変質する可能性があります。

カッティングミルは、発熱や微粉の量を最小限に抑えることができて、粉砕した粉も均一になるのですが、価格がものすごく高くなります。

大量生産・大量流通向けレギュラーコーヒーの場合、グラインド方式では無くて、カッティング方式でコーヒー豆を粉砕していて、熱の影響を避けるために、水冷か空冷で器械を冷やす高性能の粉砕機を使っているそうです。

しかし、煎りたて、新鮮な焙煎コーヒー豆を粉砕するのに、そのような高価な粉砕機は必要無いと筆者は考えています。

 

【6】微粉とチャフ

一般的なコーヒーミルは、高速回転することでコーヒー豆に圧力を与えて、発熱させながら粉砕して行く仕組みになっているようです。

高速回転で焙煎コーヒー豆を粉砕する仕組みになっているので、コーヒー豆に強い衝撃が加わって、焙煎コーヒー豆に歪みが生じて微粉が発生します。

コーヒーミルの発熱と微粉の発生は、同時に進行していると考えられています。

コーヒー豆中央部のシルバースキン(焙煎時の燃え残り)と、粉砕時に発生する微粉が混じりあった細粉をチャフといいます。

このチャフが多いと、コーヒー液を濁らせる原因となると考えられています。

ですから、挽いた焙煎コーヒー粉の中のチャフは、篩(ふるい)で除去したりします。

焙煎コーヒー豆を粉砕すると、微粉やシルバースキン、それに油脂分などがコーヒーミルに付着します。

放置しておくと、コーヒーの香味に悪影響を与えますから、こまめにコーヒーミルを清掃する必要があると考えています。

 

【7】コーヒー豆の挽き方

コーヒーを淹れるには、焙煎したコーヒー豆を粉砕して粉にする必要があります。

コーヒー豆の挽き方は、コーヒーの抽出方法によって違ってきます。

エスプレッソの場合は細挽き、ドリップ式やサイフォンの場合は中挽き、パーコレーターの場合は粗挽きが適しているとされています。

短時間で素早く淹れる場合は細挽き、ある程度の時間を費やして淹れる場合は粗挽きと、コーヒーを淹れる時間が長くなるに従って、コーヒー粉の粒度を粗くして行くのが一般的です。

サイフォンでの抽出実験によると、粒子が細かいほど色は濃く、粗くなるに従って色が薄くなり、フレーバーは、粒子が粗すぎると悪くて、細かくなるに従って良くなってきますが、あまり細かくしすぎると美味しくなくなると報告されています。

美味しいコーヒーを淹れるためには、焙煎コーヒー豆の味と香りを最大限に引き出す挽き方が必要なのだと思っています。

挽き方の目安として、「グラニュー糖」ぐらいの粒の大きさと、粒の分布割合が理想的だと言われています。

「グラニュー糖」は中挽きに相当しますが、これより粗めに挽く場合は、「味の素の本だし」を目安にするのが良いと、「序説珈琲学」に書いてあます。

 

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【8】挽き具合と抽出方法の関係

焙煎コーヒー豆の挽き具合で重要なのは、Coarse(コース/粗挽き)、Medium(ミディアム/中挽き)、Fine(ファイン/細挽き)の3段階だと考えています。

そして、焙煎コーヒー豆の挽き具合は、コーヒーの淹れ方に影響を与えると考えられています。

ドリッブ、サイフォン、エスプレッソ、フレンチプレス、パーコレーターと、コーヒーの淹れ方が違えばコーヒーの挽き具合も変わってくるのが一般的です。

それぞれのスタイルのコーヒーの淹れ方には、それぞれに最適な挽き方(挽き具合)が存在していると思っています。

 

挽き具合を言葉で説明するのは相当に難しいとは思うのですが、あえて、簡単に言葉で説明すると、次のように説明できるのだと思います。

 

Coarse(コース/粗挽き)

コーヒーの1粒1粒が、非常にはっきりと認識できます。

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Medium(ミディアム/中挽き)

のような、あるいは、粗い砂のような粒。

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Fine(ファイン/細挽き)

顆粒の砂糖やテーブル塩よりも少しだけ細かい粒。なめらかな感触があります。

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コーヒーの挽き方(挽き具合)の判断は、人それぞれだと思っています。

誰もが、コーヒーの淹れ方に合わせて調整を繰り返して、挽き方(挽き具合)を判断していると思っています。

例えば、コーヒーを薄いと感じれば、もう少し細かく挽けば良いわけです。

淹れたコーヒーを苦いと感じるならば、もう少し粗く挽くことで苦味を調整することが出来ると思います。

そのように経験を積み重ねて、自分にピッタリの挽き具合を見つけることが必要なのだと思っています。

 

挽き方と抽出方法の関係を、大雑把なのですが、表にしてみました。

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【注意1】グラニュー糖くらいか、それよりも少し大きい粒子が数多くあれば『中挽き』、グラニュー糖よりも少し細かい粒子が多ければ『細挽き』、グラニュー糖の倍くらいが『粗挽き』。

【注意2】

抽出方法が違えば、コーヒーの粉と水との接触時間も違ってきます。

接触時間が長いときは粗めに、短いときは細かく挽くと、抽出効率を一定のレベルに保つことができると考えています。

 

【9】粉砕とコーヒー豆

コーヒー豆を焙煎すると、有機酸類や糖類が分解して炭酸ガス(二酸化炭素ガス)を発生すると考えられます。

焙煎中に発生する炭酸ガス(二酸化炭素ガス)の半分は、コーヒー豆の外部に放出されてしまうと思っていますが、残りの半分はコーヒー豆の中に、香りなどの揮発性成分と一緒に焙煎終了後も保有されていると考えられています。

コーヒー豆を粉砕すると、その表面積が大きくなって、炭酸ガス(二酸化炭素ガス)や揮発性成分が放出されて、空気中から水分や酸素を吸収するという現象が、徐々にですが起こると考えています。

コーヒー豆を細かく粉砕すると、表面積が大きくなるので、湯との接触面積が大きくなりすぎて、コーヒー豆に含まれている成分の溶出が容易になると考えています。

その結果、必要以上の成分が抽出されてしまって、重たい感じのコーヒーになってしまうとも考えています。

反対に、粗挽きにしすぎると、抽出不足で、香りやコクの不十分な水ぽいコーヒーになってしまうと思っています。

また、コーヒー豆をあまりにも細かく粉砕すると、コーヒーの成分の性質が変化してしまって、コーヒーの香味に悪影響を与えることもあると考えています。

 

【10】ミルと微粉

臼歯が高速回転しているコーヒーミルでコーヒー豆を粉砕すると、摩擦熱とコーヒー豆に加えられる衝撃によって、必ず微粉が発生すると思っています。

コーヒーの抽出では、コーヒーの粉の大きさが、できるだけ揃っているのが理想です。

大きさが揃っていれば、抽出される成分も揃うわけですが、大きさが不揃いならば、抽出される成分も不揃いになってしまうと考えています。

コーヒー豆を粉砕する際に発生する微粉は、コーヒーの香味を大きく損ないます。

ですから、微粉の発生をできるだけ少なくできるコーヒーミルが、良いコーヒーミルということになります。

グラニュレーターが、微粉の発生が少なくて、粒の大きさが揃う理想のコーヒーミルだと言われていますが、価格がものすごく高くなります。

家庭用としては、低回転の手挽きミルを使用すれば、微粉の発生を少なくできるのですが、面倒です。

高速回転の臼歯でコーヒー豆を粉砕するので微粉がたくさん発生するわけですから、理論的には、モーターの回転を遅くすればよいのですが、その場合、モーターが大きくなってしまいます。

将来、低速回転で強力な回転力を持つ小型モーターが開発されれば、お手頃価格で、理想的なコーヒーミルが出現するかもしれません。

 

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