ベーシックテイスト(Basic Tastes)、日本語では味覚の基本味。味覚には、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の5つの基本味があります。
辛味や渋味も、広い意味では味だとされているのですが、味覚器が刺激されて生じる味では無くて、舌の上の痛覚が刺激されて生じる味なので基本味には入らないとされています。
【目次】
味覚の基本味=ベーシックテイスト
味覚の基本味は、基本的に化学的に感じる味だと理解しています。
基本味はそれぞれに独特の味を持っていて、それぞれの味は動物が栄養を積極的に摂取して、有害物から身を守るのに役立っていると言われています。
甘味は糖のシグナルで、旨味はタンパク質のシグナルで、塩味はミネラルのシグナルで、酸味は腐敗物のシグナルで、苦味は毒物のシグナルだとされています。
複雑な味
コーヒーを飲んで、「複雑な味」と表現することが多々あります。
こく、あつみ、ひろがり、まろやかさ、あと味などが「複雑な味」と表現されている味で、コーヒーの美味しさには無くてはならない味だと考えられています。
この「複雑な味」は、物理的に感じる味で、酸味・甘味・塩味・うま味・苦味といった化学的に感じる味では表せない味わいをもたらしてくれます。
甘味
食品成分や調味料としての甘味剤は、全て有機化合物だと言われています。
そして、甘味を呈する物質として、糖、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、テルペン配糖体、ジヒドロカルコン配糖体、イソクマリン、オキシム、スルホンアミド、尿素誘導体と、実に広範囲の物質が知られています。
人が味を識別できるのは、舌の上に存在している味蕾(ミライ)という組織によって、食品に含まれている呈味物質を識別しているからだと言われています。
そして、味蕾(ミライ)に含まれる味細胞が味物質を識別できるのは、それぞれの細胞に味物質を受け入れる受容体が存在しているからだと言われています。
ヒトに存在している苦味受容体は25種類だと考えられていますが、甘味を受容するヒト甘味受容体は1種類だけだとされています。
甘味物質の中でよく知られているのが、「糖」だと思います。
その中でも、二糖類のショ糖(スクロース)と単糖類の果糖(フルクトース)が、よく知られています。
ショ糖(スクロース)は甘味物質の標準物質で、口の中に甘味が残るという特性を持っています。
果実に含まれている甘味物質の代表が果糖(フルクトース)で、切れ味の良い甘味を持っています。
フルクトースは、温めると甘味が弱くなって、冷やすと甘味が強くなると言われています。
また、フルクトースは、他の風味を強めるとも言われています。
塩味/鹹味(かんみ)
一般的に、塩味の代表的な味物質は食塩だとされています。
食塩の味は、誰でもよく知っている味で、他の物質では代用しがたい珍しい味なのだと思います。
食塩が水に溶けている食塩水の濃度が、体液と同じくらいの時に呈する味が、平均的な塩味だと何かで読んだ記憶があります。
塩味を表現する言葉ですが、「からさ」という表現ではなくて、「塩からさ」という表現が適していると考えています。
適度な食塩が存在すると、アミノ酸、うま味物質、糖などの味覚強度が著しく増強されると言われています。
例えば、スイカや汁粉に少量の食塩を添加すると、甘味が増します。
例えば、刺身に醤油をつけたり、魚を焼くときに塩をふることで、うま味を引き出します。
食べ物の味の大半は、アミノ酸と旨味物質と食塩の組み合わせで作り出されるとも言われています。
食塩が、アミノ酸や旨味物質の味を上手に引き出しているのだと思います。
苦味
塩化マグネシウムや硫酸マグネシウムなどの無機塩も、濃度によっては苦味を感じるとされていますが、有機化合物では、複雑な窒素化合物に苦味を呈するものがあるとされています。
また、薬理作用を有する物質に、苦味を呈するものが多いといわれています。
主な苦味物質として、キリーネ、ストリキリーネ、ニコチン、カフェイン、テオブロミンなどのアルカロイドがよく知られています。
これらのアルカロイドは、非常に味覚閾値が低くて、低濃度でも苦味を感じるといわれています。
テルペン類にも、苦味を持つ物質が多いといわれています。
配糖体にも、苦味を持つ物質が数多く存在しているそうです。
疎水性アミノ酸や疎水性アミノ酸を含むペプチドも、苦味を呈するといわれています。
苦味の味覚閾値ですが、他の基本味の味覚閾値よりも、かなり低くいとされています。
これは、苦味物質は疎水的物質を持っているので、味覚を感じる機能を持っている口の中の部分に疎水結合で結合しやすいからだと説明されています。
酸味
古くから、解離して水素イオンを生成する化合物が酸味を呈することは、よく知られています。
反対に、酸味を呈する化合物で水素イオンを生成しない化合物は知られていません。
ということで、酸味は、水素イオンの味だと考えられています。
無機酸(無機化合物)の場合、酸による刺激の強さはPHに支配されているとされています。
しかし、有機酸(有機化合物)の場合、陰イオンもその生理作用に影響していると考えられるので、同じPHでも、酸の陰イオンの違いによって、味の強さが異なってくるようです。
有機酸(有機化合物)については、陰イオンの影響を無視することはできないのだと思います。
酸の種類によって「匂い」や「味わい」が違ってきます。
塩酸や酢酸のように揮発性の酸の場合、「ツーン」とした匂いがして、非揮発性のクエン酸や酒石酸は匂いがしないと言われています。
そして、それぞれの酸は、微妙に異なった味を持っているのですが、それは陰イオンの違いによるものだと考えられています。
果実は、酸味が重要な要素となっている天然の食品です。
天然の果実に含まれる有機酸のほとんどは、クエン酸とリンゴ酸だと言われています。
果実の場合、これらのクエン酸やリンゴ酸と、果実に含まれる糖の甘味の組み合わせによって、色々な風味が生成されていると考えられています。
うま味(旨味)
旨味の代表はグルタミン酸ですが、グルタミン酸は最も多く存在するアミノ酸で、蛋白質の存在を教えてくれるシグナルの役割を果たしているとされています。
日本では「うまみ」があると言えば、一般的に食べ物の味が良いことを表現していて、コクがあってバランスの取れた味の良い食感を表現しています。
また、後味、「丸み」などの口当たりを表現するのに使われてます。
コーヒー豆にはアミノ酸が含まれているので、当然、グルタミン酸も含まれています。
ですから、コーヒーに旨味があっても不思議では無いと思います。
しかし、コーヒー生豆に含まれる旨味成分は非常に少ないので、コーヒーの風味で旨味を感じる可能性がほとんど無いと考えられます。
コーヒーの風味の中に旨味成分が微かに含まれていて、その旨味成分がコーヒーの香りの助けを借りてコーヒーのコクや後味を作り出しているという見方もあります。
年老いた珈琲豆焙煎屋は、この見方に何故か親近感を覚えます。
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