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20世紀版、エカワ珈琲店の珈琲読本、(第6章)コーヒーの成分と味

コーヒー生豆の状態では味も香りも無いのですが、焙煎という加熱操作を経過することで、コーヒー特有の色、香り、味が出来上がります。

コーヒー生豆の色々な成分が、個々に、あるいは成分同士が熱によって連続的に複雑な化学反応を起こすことで、コーヒー特有の色、香り、味が生み出されてるのだと思います。

コーヒーの香りや味、色は、そのすべてがコーヒー生豆に含まれている成分が前駆物質となっていて、コーヒー豆焙煎時の熱反応を受けて複雑な過程を経て形成されていると考えられます。

 

【参考】このブログ記事を基にして、今風に修正加筆した内容の文章をキンドルでセルフ出版している電子書籍「序説コーヒー豆の自家焙煎」の中に掲載しています。

文字数は、この記事の4倍近くあるので、ある程度内容の濃いものになっていると自負しています。

「序説コーヒー豆の自家焙煎」は、コーヒー豆焙煎のうち、コーヒー豆から焙煎コーヒー豆への品質変換を年老いた珈琲焙煎屋流に記述した内容にしているつもりです。

 

  【目次】

 

(1)味のバランス、コーヒー成分と味

コーヒーの味は、基本的に、酸味と苦味のバランスによって決まると思っています。

コーヒーの酸味とコーヒーの苦味は、コーヒー生豆の銘柄・種類の違いによっても変りますが、焙煎によっても大きく変わると思っています。

通常、コーヒー豆を浅く焙煎すれば(色が淡白ならば)酸味が強くなって、深く焙煎すれば(色が濃くなれば)苦味が強くなると言われています。

 

(2)コーヒーの成分

コーヒー生豆を焙煎すると、その過程(プロセス)において、コーヒー豆に含まれている成分が熱分解を起こして、コーヒー独特の味・色・香りを生成します。

苦味はカフェインやクロロゲン酸類、苦渋味はタンニン様物質であるクロロゲン酸類、酸味は酢酸・リンゴ酸・クエン酸などから生成すると言われています。

香りは、ピラジン類など1000種以上の化合物(成分)が明らかになっているようです。

コーヒー生豆の構成物質が、焙煎という熱処理の過程でどのような化学反応を起こして成分量を変化させるのか、またそれがコーヒーの味の構成とどのように結びついているのか、それが、焙煎科学の重要な研究テーマだとも言われています。

  

(3)コーヒー生豆と酸味

コーヒーの酸味は、柑橘系の少し甘味のある酸味(すっぱさ)です。

この良質の柑橘系の酸を、たくさん含んでいるコーヒー生豆が、品質の良いコーヒー生豆だと言われています。

アラビカ種のほうがロブスタ種よりもPH(ピーエッチ)が低いので、酸味が強くなります。

標高の高いところで収穫されるコーヒー生豆のほうが、標高の低いところで収穫されるコーヒー生豆よりも酸味成分をたくさん含んでいます。

ニュークロップ(新しいコーヒー生豆)のほうが、オールドクロップ(古いコーヒー生豆)よりも、酸味が強くなると言われています。

 

(4)コーヒーと酸味

コーヒー豆に含まれている酸は、水に溶けると、プラスのイオンとマイナスのイオンに分れます。これを、解離と呼んでいます。

そのとき発生するプラスの水素イオンが、コーヒーを飲んだときに感じる、心地よい酸味(すっぱさ)の正体だと思っています。

コーヒーの酸味は、多種多様な味の酸が混ざりあって作られています。

コーヒーの酸には、コーヒー生豆に最初から含まれている、クロロゲン酸、リンゴ酸、クエン酸などと、焙煎によって新たに生成するギ酸や酢酸などがあります。

 

(5)焙煎と酸味

コーヒーの酸味は、クロロゲン酸、クエン酸、ギ酸、酢酸をはじめ、多くの酸によって作られます。

焙煎の過程で、新たに有機酸が生成されて、焙煎が深くなると、有機酸が、多孔質のコーヒー豆の組織に吸着されるので酸味が少なくなると言われています。

深く焙煎したコーヒー豆の酸味が少ないのは、有機酸類が熱分解したり、揮発したりして少なくなるためと、酸が多孔性のコーヒー豆の組織に吸着されてしまうからだと考えられています。

 

(6)コーヒーの苦味

コーヒーの苦味は、後腐れの無い、さっぱりとした苦味でなければなりません。

しかし、コーヒーの苦味には、良質の苦味から質の悪い苦味まで、いろいろな苦味があるのだと思います。

理由は、コーヒーに含まれている苦味成分の、質と比率が違うからだと持っています。

コーヒーの苦味は、コーヒーの複雑な味や風味を生み出す重要な成分です。

ごく少量の苦味であっても、人間の舌は苦味を感じます。

酸味や甘味などに苦味が加わると、味が複雑になったり、キレが出てきたりします。

酸味に苦味が加わると、酸味が引き立ちます。

また、苦味に甘味が加わると、苦味が和らぎます。

 

(7)焙煎と苦味成分

コーヒーの生豆に含まれている苦味成分は、カフェインとトリゴネリンで、アルカロイドと呼ばれている成分です。

しかし、カフェインやトリゴネリンが、コーヒーの苦味にとって重要な成分だと考えるのには、少し無理があります。

焙煎によって、新しい苦味成分が生成してきます。

この焙煎によって新しく生成する苦味成分は、カフェインやトリゴネリンと比べると苦味の強い成分です。

 

(8)クロロゲン酸と苦味

コーヒーの味覚に影響を与えている化学物質は、数多く存在しているのだと思います。

その中で、コーヒー生豆に比較的に数多く含まれていて、コーヒーの味覚に様々な影響を与えているのがクロロゲン酸類だと思います。

コーヒーの苦味の一番の原因は、焙煎によって生成するクロロゲン酸類関連物質だとする考え方が、1980年代頃から、「コーヒーの苦味」原因の主流になっていました。

その後、「コーヒーの苦味」に関する研究が進んで、最近(2010年代)では、クロロゲン酸やキナ酸からの脱水生成物であるクロロゲン酸ラクトンやキナ酸ラクトンが、コーヒーの苦味に重要な影響を与えていると報告されています。

 

(9)コーヒーの甘味

コーヒーの酸味は、果物の酸味と同じで、少し甘味を持っています。

この果糖の甘味が、コーヒーの主な甘味成分だと、年老いた珈琲豆焙煎屋は考えています。

そして、コーヒーに甘味をもたらしてくれる果糖は、コーヒー豆を焙煎することで新たに出て来た果糖だと年老いた珈琲豆焙煎屋は考えています。

 

(10)クロロゲン酸と渋味

渋味とは、舌にしびれを感じさせる味、収斂性の味を言います。

紅茶や緑茶に含まれている、タンニンと呼ばれている成分が、この渋味を持っています。

コーヒーには、紅茶や緑茶に含まれているようなタンニン成分が含まれていません。

コーヒーの渋味の原因となっている成分は、クロロゲン酸類だと思っています。