食品の内部に閉じ込められている気体の体積が増加する現象、あるいは、食品内部で気体が発生することで、その食品が膨らむ現象を膨化(パフィング)と表現しています。
高温高圧の容器内で、水分を含んでいる原料の温度が十分に上昇するまで保持しておいた後、急激に圧力の低い空間に放出すると、原料組織内の水分が瞬間的に蒸発します。
その時の、原料組織内の水蒸気の膨張する力で、原料組織が膨らむ現象を膨化(パフィング)と表現しているのだと思います。
パフィング(膨化)で代表的なのは、コーンがポップコーンになる現象です。
(Wikipediaより引用/コーンとポップコーン)
小石のように堅いコーヒー豆(生豆)に熱を加えて焙煎すると、水分含量10%~12%くらいだったコーヒー豆が、水分含量2%くらいの焙煎コーヒー豆に変身します。
水分含量が10%~12%のコーヒー生豆が、焙煎によって水分含量2%の焙煎コーヒー豆になって、大きさも約2倍になるわけです。
また、非常に堅かったコーヒー豆が、焙煎によって指でつぶせるほどに脆くなります。
このようなコーヒー豆の状態変化を、1980年代・1990年代の珈琲豆焙煎屋はパフィングと呼んでいたと筆者(年老いた珈琲豆焙煎屋)は記憶しています。
ちなみに、このパフィング現象ですが、焙煎中のコーヒー豆の1回目のハゼ音に関係していると筆者は考えています。
膨化(パフィング)は、コーンをポップコーンにするというように、物体内部に多くの空間を作る操作です。
原料を膨化(パフィング)させると、原料組織が多孔質となって、無数の微小なひび割れ・裂け目・空隙が生じるので、原料が乾燥するのを早くしたり、水の浸透を容易にしたりするのだと思っています。
復水性の良い食品原料には、膨化(パフィング)現象を利用しているものが多々あります。
コーヒー生豆は密度が高くて小石のように堅いのですが、コーヒー豆を焙煎すると膨化現象(パフィング)が発生するので、コーヒー生豆の時の1.5倍から2倍くらいに膨らんで、脆く(もろく)なります。
焙煎中のコーヒー豆が、コーヒー生豆の時の1.5倍から2倍になる段階で、コーヒー豆に残っていたチャフ(薄皮)が剥がれます。
筆者(年老いた珈琲豆焙煎屋)は、焙煎中のコーヒー豆が膨化する過程で、大半のコーヒーの風味が作られていると考えています。
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