年老いた珈琲豆焙煎屋のブログ

今年から、ブログタイトルを「年老いた珈琲豆焙煎屋の珈琲物語」から、「年老いた珈琲豆焙煎屋のブログ」に変更しました。

20世紀版、エカワ珈琲店の珈琲読本、(第1章)コーヒーノキ/後遍

『20世紀版、エカワ珈琲店の珈琲読本、(第1章)コーヒーノキ』の記事は、前遍と後編に分けて「年老いた珈琲豆焙煎屋のブログ」に掲載していて、この記事は、その後編記事です。

ちなみに、前遍の記事は、下のリンク先ページに掲載しています。

www.ekawacoffee.work

 

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『エカワ珈琲店の珈琲読本、(第1章)コーヒーノキ』は、1990年代に年老いた珈琲豆焙煎屋が20世紀に出版された珈琲関係書籍を参考書としてコーヒーの学習をしていた頃の学習ノートみたいなものです。

2023年の現在では、相当に時代遅れになっていてる記事だと思っています。

 

ロブスタ種

19世紀の末、ペルギー人科学者エミール・ローランが、アフリカのコンゴ盆地で発見したと伝えられています。

ロブスタ種は、学名「カネフォラ種ロブスタ」と命名されている品種で、コーヒーに最大の被害を及ぼす「葉さび病菌(ヘミレア)に対する強い抵抗力を持っていると言われています。

その後、野生のロブスタ種のコーヒーノキが、ウガンダやルワンダでも発見されているようです。

 

ロブスタは、コンゴ盆地で発見されたので、コンゴコーヒーと呼ばれることもあったようです。

アンゴラ、ガーナ、マダガスカルなどのアフリカ諸国を始め、ベトナム、インドネシア、フィリッピン、グァテマラといった国々で栽培されていて、コーヒー豆世界生産量の約20%を占めていると言われています。

 

低地でも栽培が可能で、成長が速くて、栽培管理に手間がかからず収量も多くて、病気に対する抵抗力も強くて、他家受粉ですからハイブリット(混血種)も出来やすいというメリットが知られているのですが、風味、品質がアラビカ種よりも劣っていると考えられています。

カフェインを始め、コーヒー有効成分の抽出量が多くて価格も安いので、アラビカ種とのブレンド用やインスタントコーヒーの原料として重宝されているようです。

 

栽培適地

アラビカ種やロブスタ種といったコーヒーの樹の栽培原種(品種)は、世界各地の栽培適地に移植されて、それぞれの土地の気候風土に適するように栽培方法の改良・工夫がなされています。

コーヒーノキの栽培には、肥沃な水はけが良い土壌が必要だと言われています。

また、年間を通じて平均した気温と降雨量、適度な日陰や冷気などの様々な条件が必要になるようです。

 

その条件を満たすのが、南北回帰線の間の熱帯地方で、コーヒーノキの栽培適地だと考えれています。

世界各地のコーヒー産地は、赤道を挟んで南・北緯25度の地帯(熱帯地域)にあります。

この地域を、コーヒーゾーンまたはコーヒーベルトと呼んでいます。

 

アラビカ種の場合、赤道付近では海抜700m~2500mの高地や山岳地帯が、南・北緯25度付近では300m~400mの地域まで栽培適地となります。

赤道から遠ざかるに従って、栽培適地の標高が低くなっていきます。

良質のコーヒーを栽培する条件として、標高が1500m以上、年平均気温が20度くらい、年間雨量が1500ミリで、有機質・各種無機成分を適量に含んでいる火山性の土壌があげられています。

コーヒーは熱帯作物ですが、アラビカ種のコーヒーノキは、日光の炎熱に弱いので、霧や雲が発生する高地での生産が向いていると言われています。

 

ロブスタ種の場合は、赤道付近であっても、低地での栽培が可能のようです。

日本の気候では、コーヒーの樹の栽培は不可能です。

ですから、国内で消費されるコーヒー豆は、ほぼすべてが輸入品です。

 

コーヒーノキの病気と霜害

コーヒーの病気は、知られているだけで300数十種類を超えていると考えられています。

その中でも、最も大きな被害を及ぼしている最悪の病気は、さび病菌「ヘミレア(Hemileia vastarix)」による葉さび病(Coffee Leaf Rust)だと言われています。

 

葉の裏側にさび病菌が付着すると、オレンジ色の斑点が出てきます。

その斑点の色が次第に濃くなって、光合成機能が失われて、葉が枯れて、収穫量も著しく少なくなって、2~3年後には、木全部が枯れてしまいます。

 

19世紀の中頃、アフリカとアジアで、この病気が猛威をふるいました。

1861年、アフリカのビクトリア湖周辺で発見されたコーヒー葉さび病は、アジア、アフリカで栽培されていたアラビカ種のコーヒーノキに多大な被害をもたらしました。

とくに、スリランカ(セイロン島)のアラビカ種のコーヒーノキは、1860年代の末までに全滅してしまって、それ以後、コーヒーノキの栽培から、紅茶の栽培に切り替わったという話は有名です。

アラビカ種は、このさび病に弱いので、インドネシアでは、葉さび病に対して抵抗力が認められるロブスタ種の栽培を増やしたという話も有名です。 

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(葉さび病の世界分布状況/フリー地図を利用してエカワ珈琲店が作成しました)

 

葉さび病菌は、風や雨によって運ばれて、葉の裏側の気孔から葉肉内へと菌糸を伸ばして、養分を奪って、植物を枯死させてしまうと言われています。

初めは直径1~2ミリくらいの淡黄色に見える小さな斑点(病班)が、次第に黄褐色に変化しながら大きくなって行くと言われています。

1~2ミリくらいの小さな斑点(病班)には、およそ100万個の胞子が巣くっていて、最適の温度(温度条件)のもとでは、猛烈なスピードで増殖して行くと言われています。

 

斑点(病班)の色が濃くなって行くのと並行して、葉本来の美しい緑色が色あせて光合成機能が失われて行くそうです。

濃褐色(さび色)に変わる頃には、葉本来の美しい緑色が全く見られなくなってしまって、萎縮して落葉すると言われています。

そして、大農園であっても、2年~3年で壊滅的な打撃を被ると言われています。

コーヒー葉さび病は、雨季に4~6週間のインターバルで、1ヘクタールにつき、3~5kgの銅系殺菌剤を散布することで予防できるとする研究報告が存在しているようです。

 

コーヒーノキの天敵は、コーヒーノキの病気だけではありません。

高地で栽培されるコーヒーにとって一番恐ろしいのは、霜による災害です。

わずか一晩の霜のために、栽培地域全域が壊滅的な被害を受けます。

1975年、ブラジルでは、この霜害で20億本の木のうち、15億本が被害を受けて、生産が半減してしまいました。 

 

南半球のブラジルは、7月が真冬です。

この時期に、南極からの寒波とアンデス山脈からの寒気が、ブラジルのコーヒー生産地帯を襲いました。

強風が収まって、急激に気温が下がった晴天の日の夜明けに、霜がコーヒー農園を襲って、コーヒーノキを冷凍状態にしてしまいました。

 

そして、その翌日、今度は強い日差しを受けて、冷凍状態の葉の水分が温められたので、緑の葉が茶褐色となって落葉して、コーヒーノキが枯死してしまったと「コーヒーの科学」という本に記載されています。