種子を播いてからコーヒーノキが成長して結実するまでに約4年、それ以降、収穫が始まって6年目~10年目くらいが収穫のピークで、15年~20年くらいは一定の収穫が可能だといわれています。
当然のことですが、その間、剪定、整枝、施肥、病害虫防除、除草などの手入れは欠かせません。
以下、コーヒーの栽培から収穫までをたどってみました。
(注意)
この記事は、【20世紀版】エカワ珈琲店の珈琲読本、(第2章)コーヒーの栽培と収穫の前編です。
前編は、下のリンク先ページでご覧になって下さい。
『【20世紀版】エカワ珈琲店の珈琲読本、(第2章)コーヒーの栽培と収穫』は、1990年代に年老いた珈琲豆焙煎屋が20世紀に出版された珈琲関係書籍を参考書としてコーヒーの学習をしていた頃の学習ノートみたいなものです。
2023年の現在では、相当に時代遅れになっていてる可能性のある記事だと思っています
【1】種まきから植え付け
根分け、さし木、つぎ木による方法もありますが、普通は、丈夫な木から採ったタネを播いて育てる方法でコーヒーノキを増やして行きます。
タネのまき方には、苗床で発芽させる方法と、苗床を使わず、土に穴を掘ってタネをまく方法があります。
苗床で発芽させる方法を、伊藤博さんの「珈琲を科学する/時事通信社」の記述を参考にさせて頂いて説明します。
発芽床にタネを播くと40日~60日で発芽して、その後20日~30日で双葉が出てくる。
この時(蝶が羽根を広げた格好になっている時期)、黒色のポリやビニールの育苗ポットに移します。
ポットは、直径15cm、深さが30cmくらいで、排水のための穴が数か所開けてあり、その中に、雑草の種子を含まない土と肥料をかき混ぜて入れます。
3か月位で、15cmくらいに成長するそうです。
苗木を強い直射から守るために、苗床には日よけを設けて、毎日一定の時刻に散水して水を補給したり、病虫害や除草にも気を配る必要があるそうです。
土に穴を掘ってタネを播く(直播き/じかまき)方法では、発芽させた後、いちばん強そうなものを選んで育てます。
どちらの方法でも、半年~1年後の雨季のはじめに、成長した苗木を農園に移植します。
(コーヒーの科学/㈶科学技術教育協会より引用)
【2】剪定
剪定(せん定)の目的は、木の老化を防いで活性化させることにあります。
木の成長に合わせて、木を切って新芽を出させ、新しい幹を育てます。
そうすることによって、樹の勢いを強くして収穫量を増やし、樹の寿命を伸ばして豆の品質を良くしています。
コーヒー植物の不必要なシュートや枝を取り除く作業が、コーヒーノキの剪定です。
コーヒーノキの樹高が高くなりすぎると栽培管理が難しくなるので、栽培管理を容易にするために剪定をします。
剪定をして、コーヒーノキを清潔にしておくことで、コーヒーの病気を防いでいます。
コーヒーノキを保護するためには日陰が必要ですが、葉があまりにも密集していると、葉に勢いが無くなってしまうので、剪定で取り除いています。
また、枝が適当に剪定されていることで、風の被害からコーヒーノキを守っています。
剪定で余分な枝を取り除くことで、若いコーヒーノキがのびのび成長することができて、コーヒーの果実に十分な栄養を与えることができるようになります。
剪定は、若いコーヒーノキの成長を最大限にサポートしています。
(以下、伊藤博さんの「珈琲を科学する/時事通信社」からの抜粋です)
コーヒーノキは、一度実がなった枝に再び実がつくことはありません。
一年目の収穫節は黒くなって、その先が二年目の収穫節となります。
しかし、コーヒーノキの成長は、一定の限度に達すると緩慢になってくるので、結実範囲は狭くなって行きます。
そこで、コーヒーノキの成長に合わせて木を切って新芽を出させて、新しい幹を育て、樹勢を強くして収穫量を高めるために剪定作業を行っています。
【3】マルチング
枯草やマメ科植物、バナナの葉などを根の周囲に敷くマルチング(敷草・覆土)は、コーヒーの栽培に様々な効果をもたらしてくれます。
雨季には雑草が茂るのを抑え、乾季には地面の水分を保持して乾燥するのを防ぎ地面の温度を低くする効果があります。
また、枯草やマメ科植物、バナナの葉などを、コーヒーの根の周囲に敷き詰めるわけですから、土壌分解を促進して養分を供給する効果もあって、コーヒーの収量を増加させると言われています。
㈶科学技術教育協会発行の「コーヒーの科学」には、マルチング(Mulching)について以下のように記述されています。
枯草や木の葉、バナナの皮などを木のまわりに敷くマルチングには、次のような効用があります。
(1)表土の保護、逸散を防ぐ。
(2)流水を止めて、水分を与える。
(3)乾燥を予防して、発育を助ける。
(4)土壌分解を促進して、発育を助ける。
(5)雑草を抑えて、雑草に水分・栄養分を吸収されるのを防ぐ。
(6)木の周りに炭酸ガスを増やす。
(7)覆土に使われる素材は、肥料の効用を増す働きをする。
(以上、「コーヒーの科学」よりの抜粋)
熱帯地方で植物を栽培する場合、水は絶対必要条件だと言われています。
伝統的に、水の補給は降雨に依存しているわけですが、マルチングによって、水分の蒸発を防ぐことができて、降雨によって得た水分を有効利用できるようになるのだと思います。
水分を有効利用することで、バナナやトウモコシなどの食用植物を、コーヒーノキと併植することができるのだと思います。
【4】肥培管理
コーヒーノキの栽培では、新しい土地であっても、20年~30年で土地の力が低下してしまいます。
コーヒーの木は、地中から、炭酸カルシウム、窒素、燐酸などを吸収するので、放置しておけば地力が低下します。
それを無視して収穫を続ければ、毎年のように収穫量が少なくなり、木そのものをダメにしてしまいます。
そこで、地力を維持しながら一定の生産量を上げるためには、施肥をどうしても欠かすことができません。
生育のために必要な肥料はカリウムと窒素で、特にコーヒーの果実は地中から大量のカリを吸収して、結実の初期にはリン酸が必要になると言われています。
肥料としては、窒素・リン酸・カリが重要で、特定の雑草、マメ科植物、コーヒーの果肉、剪定による枝や葉、油粕、魚粉、木灰のほか、化学肥料も使用されます。
施肥が偏っていたり不足したりすると、その影響は必ず葉に現れて、コーヒーノキ全体への被害とコーヒー豆の品質低下を招くと言われています。
コーヒーノキは、年数の経過とともに施肥量が増えるので、肥料の種類と使い方、施肥の時期など肥培管理全般について注意を払う必要があるそうです。
【5】日よけ(シェードツリー)
シェードツリー(日陰樹)のことを、ソンブラとも言っています。
コーヒーの栽培には日光が必要ですが、それ以外に、毎日一定時間、木のまわりの地温を低く保つために日陰も必要です。
そのため、多くの生産国では、日の出から日没までの間、連続して日光の直射を受けないように、山の東、あるいは東南の斜面にコーヒー農園が作られています。
そして、多くのアラビカ種のコーヒー生産国では、山の斜面を利用してコーヒーノキを栽培しています。
特に、幼木の期間は、強い日差しと地面の高温からコーヒーノキを守る必要があると言われています。
そのために、その土地に適した樹木をコーヒーノキと伴植して、適度な日陰を作ることで、強い炎熱からコーヒーノキを守っています。
このコーヒーノキと伴植する樹木のことをシェードツリーと呼んでいるのですが、シェードツリーを採用している産地と、していない産地が存在しています。
シェードツリーを採用している産地では、6~7m間隔で、バナナ、ひまわり、マンゴーなど、その土地に適した樹木を併植して、コーヒーノキを強い炎熱から守るために適度な日陰をつくっています。
(コーヒーの科学/㈶科学技術教育協会より引用)
後編は、下のリンク先ページです。
【PR】年老いた珈琲豆焙煎屋がキンドルでセルフ出版している電子書籍です。