コーヒーノキの栽培は、気温、降水量、土壌をはじめ、色々な条件が揃っていることが必要だと言われています。
その必要条件を満たす地域が、赤道を中心に北緯25度、南緯25度の環状地帯(コーヒーベルト)に位置している国々のコーヒー農園なのだと思います。
コーヒーベルトに位置していて、コーヒーノキを栽培している国々のうち、代表的なコーヒー生産国を幾つかピックアップしてみました。
【参考】『20世紀版、エカワ珈琲店の珈琲読本、(第4章)コーヒー豆の生産国、認証、保蔵【後編】』は、下のリンク先ページで読んで頂けます。
『【20世紀版】エカワ珈琲店の珈琲読本、(第4章)コーヒー豆の生産国、認証、保蔵』は、1990年代に年老いた珈琲豆焙煎屋が20世紀に出版された珈琲関係書籍を参考書としてコーヒーの学習をしていた頃の学習ノートみたいなものです。
2023年の現在では、相当に時代遅れになっていてる可能性のある記事だと思っています。
【1】コーヒー豆の生産国
(1)ブラジル
ブラジルの国土面積は、日本の約23倍、南アメリカ大陸の約半分を占めていて、世界第5位の広さです。
コーヒー栽培に適するテーラ・ロシャという肥沃な赤土に恵まれ、世界第1位の生産量を誇っていて、世界のコーヒー消費量の相当部分がブラジルで生産されているとも言われています。
ブラジルのコーヒーは大部分が非水洗式のアラビカ種ですが、コニロンというロブスタ種のコーヒー豆も生産しています。
広大な国土の各地で収穫されるコーヒー豆には、品質差が生じます。
そこで、ブラジル独自の統一した厳しい審査基準が設けられていて、その基準に基づいて選別処理されています。
ブラジルには日系人が多く暮らしていて、海外で最大の日本人社会を形成していると言われています。
ミナスジェライス州などのコーヒー産地には、日系の農園も多数存在していて、高い評価を受けているようです。
(2)コロンビア
コロンビアは、南アメリカ大陸の北西端に位置していて、北はカリブ海、西は太平洋に面しています。
国土面積は日本の約3倍で、主要な都市は全て高地に存在しています。
コーヒーが栽培されているのは、チェラ・テンペラーダ(温暖地帯)と呼ばれる標高1200m~1800mの山岳地帯で。
この山岳地帯の急斜面に大小数十万の農園が立地しているので、収穫作業は、手作業で人手と時間をかけて行われているようです。
そして、コロンビアコーヒー生産者連合(FNC)が、大小数十万の農園の利益を代表しているとされています。
伊藤博さんの『珈琲を科学する』によると、有名な生産地は、≪メデリン≫・≪アルメニア≫・≪マニサレス≫・≪ボゴタ周辺≫で、『スプレモ』と『エキセルソ』という等級に分別されるとあります。
コロンビアのコーヒー豆は水洗式のアラビカ種で、マイルドコーヒーの代表となっています。
良質のコーヒー豆は、淡緑色をしていて大粒で、適度な酸味があって、うまみ・香気・風味のバランスがとれていると、『コーヒー学講義』に書いてあります。
(3)ジャマイカ
ジャマイカは、世界最高級のコーヒー生豆として知られているブルーマウンテンコーヒーの生産地です。
ジャマイカの名前は、先住民の言葉「XAYMACA(森と水の国/ザイマカ)」に由来するといわれているとおり、国土の5分の4が平均高度500mの山地で、1800~2000ミリの年間平均降水量がある雨量の多い国と説明されています。
ジャマイカ島の東部に位置する最高峰2256mのブルーマウンテン山脈、そのごく限られた地域で栽培されているティピカ種(アラビカ種)のコーヒー豆が、ブルーマウンテンコーヒーだとジャマイカ政府が定めています。
ブルーマウンテンコーヒーは、標高800m~1200mの山の斜面で栽培されています。
熱帯カリブの豊かな太陽の光と、濃い霧や雨がもたらすブルーマウンテンエリアの気候は、昼と夜では大きな温度差があり、この温度差が時間をかけてゆっくりと美味しいコーヒー豆を育んでいると言われています。
ジャマイカ産のコーヒー豆の品質評価は高くて、ブルーマウンテンコーヒー以外にも、標高450m~900mの中部地域で栽培されている「ハイマウンテン」や、ジャマイカ島全域で収穫される「プライムウォッシュ」などが知られています。
(4)グァテマラ
北はベリーズ、西はメキシコ、東はホンジュラスとエルサルバドルに国境を接していて、中米北西部に位置する、日本の3分の1弱の国土面積を有する国です。
国土の70%が山岳高原地帯で、火山灰土壌と温暖な気候、豊富な降水量に恵まれていて、良質のコーヒー豆を産出するという事で知られています。
グァテマラのコーヒー豆は、青みを帯びていて大粒で、味はまろやかで、良質な酸味・コク、それに優れた香りを持っているとされています。
標高600~1500mの山の斜面で栽培されているとの事で、首都グァテマラシティーの西方、標高1500mの高地にあるアンティグア地方で産出されるコーヒー豆は特に有名です。
グァテマラコーヒーの特徴は、アラビカ種の突然変異種であるブルボン種の産出が多いことだと、『コーヒーの科学(財団法人科学技術教育協会発行)』に記載されています。
(5)エチオピア
アフリカ最古の独立国で、モカ伝説発祥の地、ソロモン王とシバ女王の子供メネリク1世によって、紀元前1000年頃建国されたと伝えられています。
国土の大部分が高原で、土壌と気候がコーヒーの生育に適していると言われています。
野生のコーヒーが自生していて、アラビカ種のコーヒー豆は、全てエチオピアを起源としていると考えられています。
営農形態は小規模な農家が大部分で、庭先で他の作物と一緒に栽培されていることが多いとされています。
そして、農家自身が、自分の家の敷地内で栽培しているコーヒーノキの樹齢や品種を把握していないケースもたくさんあるとも言われています。
1997年に発刊された伊藤博さんの『珈琲を科学する(時事通信社発行)』には、原始的な農業形態で乾燥式を主流とするアビシニアン・コーヒーが主ですが、シダモ・ジンマといった地域では、植樹・施肥・剪定も行われている、と書いてあります。
エチオピアでコーヒーが日常茶飯の飲み物となったのは、19世紀末になってからですが、現在ではブンナと呼ばれていて、コーヒーセレモニーに見られるように、様々な儀式に使われる国民的飲料となっているそうです。
(6)インドネシア
インドネシアは、赤道を中心に、大小1万3000以上の島々で構成される、世界最大の群島国家で、首都はジャワ島のジャカルタです。
1686年、オランダ人によって、インドからアラビカ種のコーヒーノキが移植されたのが、インドネシアでのコーヒーノキ栽培の始まりだと言われています。
その後、19世紀にさび病で一度コーヒーノキは全滅したのですが、20世紀になってから病虫害に強いロブスタ種のコーヒーが導入されました。
インドネシアのロブスタ種WIBは、水洗式で精製処理されていて、ロブスタ種で世界随一の品質を誇っています。
もちろん、アラビカ種のコーヒーも栽培していて、スマトラ島のマンデリン、スラウェシュ島のカロシー、バリ島のアラビカコーヒーなど、香気がよくてコクのある高品質のコーヒー豆を産出しています。
(7)タンザニア
アフリカ最高峰のキリマンジャロ山は、ケニアとタンザニアの国境近くにあります。
その山麓、モシやアルーシャの山岳高原地帯のコーヒー農園を含むタンザニアの北部地区で収穫・生産されるコーヒー豆をキリマンジャロコーヒーと呼んでいるのだと思います。
精製方法は水洗式、緑灰色の大粒なブルボンタイプのコーヒー豆で、強い酸味と豊かな香りが特徴だとされています。
(8)パナマ
パナマ共和国は、北米大陸と南米大陸の境に位置するパナマ運河で知られている国です。
コーヒー豆の主要産地はコスタリカ寄りの西部隣接地ですが、生産量はそれほど多くはありません。
国土の約8割が山地で、熱帯性気候と豊富な降水量を持っているので、まろやかで調和のとれたカップコーヒーを作り出すコーヒー豆を産出すると言われています。
ティピカ種などの在来種も多く栽培されていて、その品質の高さは、世界中のコーヒー専門家から注目されているようです。
(9)コスタリカ
国土面積は狭いのですが、地形は変化に富んでいて、それに伴って気候の地域差も大きくて、それぞれの地域で非常に個性のあるコーヒー豆が産出されています。
全体的に、際立つ高い酸味と透き通ったマイルドなカップコーヒーという特徴を持っているようです。
軍隊を持たない国で、教育水準も高くて、政治・経済も安定しています。
(10)パプアニューギニア
南太平洋にあるニューギニア島は、世界で二番目に大きな島です。
その東側半分とニューブリテン島やブーゲンビル島など周辺の島々からなる国が、パプアニューギニアです。
ニューギニア島は、気象条件(熱帯)や地形がコーヒー生産に非常に適した土地で、小規模な農家が8割を占めているのですが、栽培環境は世界の生産国の中でも最上級だと言われています。
ニューギニア島の中央部を斜めに山脈が横切っていて、その北側にコーヒー産地で知られている東ハイランド州の州都ゴロカ(標高1500m)や西ハイランド州の州都マウントハーゲン(標高1700m)が位置しています。
ティピカ種も数多く栽培されていて、パプアニューギニアの水洗式アラビカ種は、良質で香り高いカップコーヒーを作り出すとも言われています。
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