コーヒー豆から97%以上のカフェインを除去したコーヒー豆を、デカフェコーヒー豆、あるいはカフェインレスコーヒー豆と呼んでいます。
カフェイン含量の少ないコーヒー豆を生産するコーヒーノキも発見されていますが、普通、カフェイン除去はコーヒー生豆の段階で行われています。(2019年現在)
コーヒー生豆からのカフェイン除去方法(orプロセス)として3つ(or4つ)の方法が知られています。
それらのカフェイン除去方法の中で、水だけでカフェインを除去する方法がスイスウォータープロセスと呼ばれている方法です。
【目次】
- (1)スイスウォータープロセスの最大の特徴
- (2)まず、フレーバーチャージ水(orグリーンコーヒーエキス)を作ります
- (3)フレーバーチャージ水を使ってコーヒー豆からカフェインを除去する
- (4)コーヒー生豆からカフェインを除去してからの処理
- (5)他のカフェイン除去プロセスよりもコストが高くなる
- (6)スイスウォータープロセスにも問題点が
(1)スイスウォータープロセスの最大の特徴
スイスウォータープロセスは、コーヒー生豆からカフェインを除去するに際して、化学物質を一切使う必要がありません。それが、スイスウォータープロセスの最大の特徴だとされています。
スイスウォータープロセスは、1933年、スイスで考案された方法です。
1980年にスイスの会社が実用化可能な方法を開発して、1988年、カナダの会社(Swiss Water Company)が実用化しています。
このカナダの会社のカフェイン除去工場は、オーガニック認証を受けている世界で唯一の工場(2019年4月の時点)ですから、有機栽培コーヒー生豆からのカフェイン除去は、すべてスイスウォータープロセスで行われているということになります。
(2)まず、フレーバーチャージ水(orグリーンコーヒーエキス)を作ります
コーヒー生豆をお湯に浸して、コーヒー生豆に含まれているカフェインをお湯の中に抽出します。この時、カフェインだけでなくて、糖やタンパク質などの可溶性物質(水に溶けやすい成分)もコーヒー生豆から抽出されてきます。
カフェインにプラスして他の可溶性物質も溶けている抽出液から、カフェイン分子だけを捕獲するくらいの小さな孔を持つ活性炭フィルターを使って、カフェインだけを取り除きます。
この操作によってできたカフェインだけを取り除いたコーヒー生豆成分(風味成分)抽出液をフレーバーチャージ水(orグリーンコーヒーエキス)と呼んでいるようです。
フレーバーチャージ水(orグリーンコーヒーエキス)を作るのに使ったコーヒー生豆は廃棄されますが、廃棄したコーヒー生豆の抽出成分で作ったフレーバーチャージ水(orグリーンコーヒーエキス)は、新しいコーヒー生豆からカフェインを除去するのに使われます。
(3)フレーバーチャージ水を使ってコーヒー豆からカフェインを除去する
フレーバーチャージ水(orグリーンコーヒーエキス)は、カフェイン以外の風味成分が飽和状態になっている特別な水ですから、フレーバーチャージ水(orグリーンコーヒーエキス)を使ってコーヒー生豆成分を抽出するに際して、カフェイン以外の可溶性成分が、この水に溶けて抽出されることはありません。
コーヒー生豆からフレーバーチャージ水(orグリーンコーヒーエキス)に移動できるのは、カフェインだけです。
その結果、コーヒー生豆に含まれる水溶性の風味成分を失うことなく、コーヒー生豆からカフェインだけを除去できます。
(4)コーヒー生豆からカフェインを除去してからの処理
コーヒー生豆からカフェインだけが移動して来ているフレーバーチャージ水から、活性炭フィルターを使ってカフェインを取り除きます。
カフェインを取り除いて、再びカフェインフリーとなったフレーバーチャージ水は、新しいバッチのコーヒー生豆からカフェインを除去する(抽出する)のに使われます。
カフェインを取り除いたコーヒー生豆は、普通のコーヒー生豆の持つ水分レベルまで乾燥させて袋詰めされます。
スイスウォータープロセスでは、99.9%のカフェインが取り除かれます。(カフェインフリーのコーヒー生豆が出来上がります)
(5)他のカフェイン除去プロセスよりもコストが高くなる
ヨーロッパで主流の有機溶媒を使ってカフェインを除去するプロセスでは、コーヒー生豆から取り出したカフェインは有機溶媒に付着するので、脱水回収したカフェインを販売することができます。
しかし、スイスウォータープロセスでは有機溶媒を使わないので、カフェインを回収して販売することができません。その分だけ、カフェイン除去コストが割高になります。
(6)スイスウォータープロセスにも問題点が
スイスウォータープロセスでは、最初に、コーヒー生豆に含まれる風味成分が溶けているフレーバーチャージ水(orグリーンコーヒーエキス)を作成します。そして、そのフレーバーチャージ水を、次回からのコーヒー生豆カフェイン除去のバッチに使います。
そのため、幾つものコーヒー生豆カフェイン除去のバッチからの風味成分が混ざり合って、それが焙煎コーヒー豆の風味をぼやけさせる可能性があるとも言われています。