熱源がガスで直火の小型ドラム式コーヒー豆焙煎機(あるいは半熱風)を使ってのコーヒー豆焙煎限定かもしれませんが、コーヒー豆焙煎の初期プロセスに、「蒸らし」と呼ばれる工程が必要不可欠だと、コーヒー豆自家焙煎歴30年の年老いた珈琲豆焙煎屋は考えています。
【目次】
焙煎プロセスと「蒸らし」
ドラム内雰囲気の相対湿度と圧力を増やすことで、コーヒー豆内に水蒸気を閉じ込める焙煎操作、それが「蒸らし」だと考えています。
この「蒸らし」プロセスを経ることで、コーヒー豆の細胞壁を構成する高分子繊維のガラス転移をある程度コントロールできるようになると考えています。
そして、その高分子繊維のガラス転移をコントロールすることで、コーヒー豆の細胞内で完結する化学反応をある程度コントロールできるようになって、コーヒーの風味もある程度思うように調整できるようになると考えています。
ガラス転移という現象
ガラス転移という現象は、コーヒー豆焙煎に大きな影響を与えていると考えています。
では、そのガラス転移とは、どのような現象なのだろうかと言う事です。
物質には、秩序正しく分子が並んでいる結晶と分子が無秩序に並んでいる非晶質があって、一般的に非晶質の固体をガラス状態にあると言っています。
このガラス状態の固体に熱を加えて温度を上昇させて行くと、ある温度になれば柔らかくなって来ます。
この柔らかくなった状態をゴム状態と呼んでいます。
そして、ガラス状態からゴム状態に、あるいは、ゴム状態からガラス状態に変化する現象をガラス転移と呼んでいて、ガラス転移が発生する温度を、ガラス転移温度(ガラス転移点)と呼んでいます。
ガラス転移曲線とガラス転移の関係
ガラス転移は、温度と水分に依存しています。
ガラス転移温度(ガラス転移点)と含水率の関係を表す曲線を、ガラス転移曲線と呼んでいます。
ガラス転移とガラス転移曲線の関係を、乾燥ソーメンを例にして下の図で説明します。
乾燥ソーメンは、ガラス状態です。
乾燥ソーメンをお湯でゆでると柔らかいゴム状態(B点)になって、それを常温で放置して置いても柔らかいゴム状態のままです(C点)。
乾燥ソーメンをラップに包んで電子レンジで温めると、これもゴム状態(D点)になりますが、水分含量が少ないので温度が下がるとガラス状態に戻ってしまいます。
コーヒー豆細胞の細胞壁とガラス転移
コーヒー豆の細胞を包んでいる細胞壁は、高分子繊維で構成されています。
ですから、コーヒー豆の焙煎とガラス転移現象との関係で重要なのは、高分子繊維のガラス転移だと考えます。
コーヒー豆細胞の細胞壁を構成する高分子繊維(例えばセルロース)は、結晶質と非晶質とが混在した半結晶質ですから、温度変化によってガラス転移します。
そして、このガラス転移ですが、融点を上昇させることで、粘弾性の状態(ゴム状態)をコントロールできると年老いた珈琲豆焙煎屋は考えています。
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