カフェストールとカウェオール、どちらも、炭化水素の一種であるジテルペン類(ジテルペンアルコール類)で、水に不溶、脂溶性のコーヒー脂質です。
カフェストールとカウェオールの違いは、カウェオールの化学式が、カフェストールの化学式よりも2重結合が1つ多くなっているだけのようです。
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年老いた珈琲豆焙煎屋がキンドルでセルフ出版している電子書籍「序説コーヒー豆の自家焙煎」には、コーヒーの成分についての記述を収録しています。
カフェストールとカウェオールですが、コーヒー脂質不ケン化物の大部分を占め、そのほとんどが脂肪酸とエステルを形成しています。
カフェストールのほとんどはパルミチン酸とエステルを形成しているのですが、カウェオールはいろいろな脂肪酸とエステルを形成しています。
カフェストールとカウェオール、この2つの化合物の濃度は、コーヒー生豆の種類によって変わります。
アラビカ種のコーヒー生豆には、カフェストールとカウェオールの両方が含まれています。
しかし、ロブスタ種のコーヒー生豆には、カフェストールがアラビカ種の半分くらい含まれているだけで、カウェオールはほとんど含まれていません。
アラビカ種のコーヒー生豆には、カフェストールとカウェオールが、コーヒー生豆重量の1~1.3%くらい含まれています。
1980年代の後半、フィルターでろ過されていないコーヒーを飲むと、その人のコルステロール値が上昇することがわかりました。
そして、その原因が、カウェオールとカフェストールにあることが判明しました。
カフェストールは、カウェオールよりも人のコルステロール値を上昇させる力が強いとされています。
スカンジナビア半島独特のコーヒーの淹れ方であるボイルドコーヒーや、伝統的なターキッシュコーヒー、それにフレンチプレスを使って淹れたコーヒーには、カフェストールやカウェオールがハイレベル(6~12mg/cup)に含まれているとされています。
エスプレッソコーヒーにも、比較的ハイレベルのカフェストールやカウェオールが含まれているとされています。
一方、紙フィルター・布フィルターでろ過したコーヒーやインスタントコーヒーに含まれているカフェストールやカウェオールの量は、低レベル(0.2~0.6㎎/cup)だとされています。
フィルターでろ過したコーヒーに含まれるカフェストールやカウェオールは低レベルで、特に、紙フィルターでろ過したコーヒーに含まれるカフェストール・カウェオールの量が少ないと報告されています。
カフェストールとカウェオール、この2つのジテルペンアルコール類は、人のコルステロール値を上昇させるわけですが、人の健康に良い効果を与えるという研究もあるわけです。
カフェストールとカウェオールの両方ともに、抗発ガン性の機能を持っているとする主張があります。
コーヒー消費量が多い人ほど、大腸がんになるリスクが減少するという疫学的研究も存在しています。
他に、ジテルペンアルコールは、多環式芳香族炭素(コゲ)やカビ毒に対するブロック機能を持っているとも主張されています。
その理由は、コーヒーに含まれるジテルペンアルコール類が、体内の解毒酵素を活性化させるためだと説明されています。
カフェストール
ジテルペン類には、ジテルペン・アルコール類とジテルペン配糖体があります。
コーヒーに含まれているカフェストールは、ジテルペン・アルコール類です。
カフェストールは、コーヒー生豆・焙煎コーヒー豆・液体コーヒーと、様々なタイプのコーヒーに含まれています。
まだまだ研究中の化学物質のようですが、研究者の関心を集めている化学物質だと言われてます。
カフェストールの化学式は、下図のようになっています。
カフェストールは、アラビカ種のコーヒー生豆にも、ロブスタ種のコーヒー生豆にも、どちらにも含まれています。
アラビカ種のコーヒー生豆には0.6%の濃度で含まれているのですが、ロブスタ種のコーヒー生豆には、それよりもかなり少ない濃度でしか含まれていません。
国際的な研究では、カフェストールが人のコルステロール値を上昇させることを示しているとされています。
そのメカニズムや人の健康への影響を完全に解明されているわけではありませんが、人の健康に有害かもしれない肝臓酵素の値を上昇させるという研究もあります。
そして、女性は、男性よりもカフェストールの影響を受けやすいとする研究もあります。
というように、カフェストールがコーヒーを飲む人の健康に有害である可能性も、不確かですが存在しているようです。
でも、コルステロール値や肝臓酵素の数値上昇は一過性のものであって、人の健康に有害だとは考えられないという主張もあるわけです。
それに、幸いにも、コーヒーに含まれるカフェストールを、ごく僅かの量にするコーヒーの淹れ方が存在しています。
北欧のボイルドコーヒーやトルコのターキッシュコーヒー、それにフレンチプレスで淹れたコーヒーやエスプレッソコーヒーは、カフェストールの濃度が少し高めですが、紙フィルターや布フィルターでろ過したコーヒーは、カフェストールの濃度が極端に低くなります。
もし、カフェストールの健康への悪影響を心配するのなら、ペーパーフィルターでろ過したコーヒーを飲むことをおすすめします。
コーヒーには、カフェストールをはじめとして、多くの種類の色々な性質を持つ化合物が含まれています。
そして、それらの化合物の全てが研究されているわけではありません。
もしかしたら、健康上のリスクを持つ化合物が含まれている可能性も、健康にものすごく有益な化合物が含まれている可能性もあるわけです。
おそらく、後者の可能性が強いと考えています。
コーヒーに含まれる化合物の潜在的な健康上の問題点を検討するだけでなくて、コーヒーに含まれる化合物の利点を、もっともっと検討する必要があるのだと思います。
カウェオール
カウェオールは、アラビカ種のコーヒー生豆に多く含まれているジテルペン・アルコール類です。
コーヒー生豆に含まれている、もう一つのジテルペンアルコール類であるカフェストールと違って、カウェオールは化学的に分離するのが難しい物質だといわれています。
ですから、コーヒー生豆に含まれているカウェオールの研究は大変難しいとされていたのですが、最近、それにも関わらず、カウェオールに関する研究が盛んになってきているようです。
カウェオールは、風味が優れているアラビカ種のコーヒー生豆に多く含まれていて、風味が劣るロブスタ種のコーヒー生豆にはほとんど含まれていません。
カウェオールやカフェストールは、コーヒーを飲む人のコルステロール値を上昇させると考えられています。
これは、常日頃、コルステロール値の高い食べ物を好んで食べている人にとっては、大きな問題です。
でも、カウェオールは、人の健康に良い影響を与える機能も持っていると考えられています。
まだまだ、研究段階だということですが、幾つかの発ガン性物質をプロックする機能を持っているとされています。
また、カウェオールには、体内の解毒酵素を活性化する機能があると主張されています。
これも、まだまだ研究段階なのだそうですが、カビ毒菌、ダイオキシンやコゲた材料により生成する物質など、健康に有害な物質を無力化する機能を持っているかもしれません。
【参考までに】
コーヒーに含まれる悪玉ジテルペン類とも表現されているカウェオールやカフェストールですが、その含有量が最も少なくなるコーヒーの淹れ方は布フィルターや紙フィルターを使うドリップ式の淹れ方で、1杯あたりの含有量が、どちらのジテルペン類も0~0.1くらいになるようです。
フレンチプレスやトルココーヒーや北欧風煮出しコーヒーといったコーヒーの淹れ方の場合、相当に含有量が多くなるようです。
下図は、色々な淹れ方のコーヒーに含まれるジテルペン類の量です。
上の表は、『栄養成分ブレンドコーヒーの手引き/第63話』より拝借しています。