今から40年くらい前の昔、その頃存在していた日本長期信用銀行という大手銀行の現役銀行マンの著書、『路地裏の経済学』という本が静かなベストセラーを続けていました。
現在(2021年)と違って、その頃の地域商店街は、市民生活にとって欠くことのできない存在でした。
『路地裏の経済学』は、地域商店街を構成している個人商店を材題にして、事業と生業の違いをわかり易く解説していたと記憶しています。
特定の技能・能力を持っている人がいて、はじめて経営が成り立つのが生業で、そういった特定の人がいなくても経営を維持・継続することができるのが事業だと、書いてあったのを記憶しています。
商店街を構成している、魚屋、八百屋、精肉店、雑貨屋、花屋、喫茶店といった個人商店だけでなくて、街のお医者さんや税理士事務所、弁護士事務所なども生業の部類に入ります。
医院ならお医者さんが、税理士事務所なら税理士さんがいなければ営業ができません。
夫婦で営業している個人商店も、どちらかが働けなくなれば営業の継続が困難になります。
しかし、事業の場合、人ではなくて組織で仕事をしているので、ある特定の人が退職したりしていなくなっても営業を維持・継続することができます。
「路地裏の経済」がベストセラーになっていた頃から40年の年月が流れて、地方の町では、地域商店街だけでなく、その地方の中心商店街もほぼ消滅して、その名残りだけが存在しています。
何故、地域商店街や中心商店街がそのような状態になってしまったのか、その理由は、簡単です。営業環境が、急激に変化してしまったからです。
資本力・営業力のある事業会社が生業店の領域にまで進出することができるようになって、個人経営の生業店が競争に負けてしまったからです。
事業、生業の別なく、大競合の時代に突入しているのだと思います。生き残るためには、時代の流れについて行くしか道がありません。
2006年の9月頃は、そのように考えていました。
現在(2021年)は、そのようには考えていません。数年の間に、またまた営業環境が変化しています。
「路地裏の経済学」の主役だった生業商売にも、新しい未来が開け始めているような気がします。
「とんかつ屋の悲劇」という言葉を調べていて、そのことを強く感じました。
「とんかつ屋の悲劇」に登場するような街で人気のとんかつ屋さんに対抗する術を、外食チェーン店は持っていないようですから・・・。
暮らして行くための収入源を企業の雇用に全面依存するのが難しくなって来ている昨今ですから、竹内宏さんの著書「路地裏の経済学」が再び脚光を浴びる時代がやって来ているような気がします。
例えば、ある零細生業パパママ経営のコーヒー豆自家焙煎店は、路地裏経済に依存した商売で食べて行くだけは稼げています。
40年前の路地裏経済の環境とは少し環境が異なっていますが、路地裏経済の基本的な部分では何も変わっていないような気がします。
下のリンク先記事は、年老いた珈琲豆焙煎屋が投稿した「路地裏の経済学」に関係するブログ記事です。