年老いた珈琲豆焙煎屋のブログ

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とんかつ屋でもコーヒー豆自家焙煎店でも「とんかつ屋の悲劇」は発生します、それが個人の技能に依存している生業商売の宿命だと思います

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とんかつ屋の悲劇

「とんかつ屋の悲劇」という言葉があります。

外食チェーン店なら、1000円~1500円くらいの値付けをしなければ利益を出せない品質のトンカツ定食を600円~800円くらいで売っていて、グルメサイトなどで「何十年も変わらない値段、チェーン店では考えられない品質の高さと値段の安さ」と紹介されて人気を博しているとんかつ屋さんが突然に店じまいする現象を、外食チェーンの経営幹部の人たちは、「とんかつ屋の悲劇」と表現しているようです。

 

街で人気の「とんかつ屋」さんは、店舗は自己所有で借金もほとんど無くて、商売を始めて長い年月(何十年)が経過しているので設備の償却が終わっていて、店舗は高齢の夫婦2人で切り盛りしていて、商売が生きがいになっていて、高齢ですから国民年金を受給していて、その年金が補助金のような役割を演じているので、それほど儲けられなくても営業を続けられる仕組みになっているとのことです。

企業経営の視点から見れば、それが若い世代が「街で人気のとんかつ屋」を引き継ぐ際のネックとなっていて、「とんかつ屋の悲劇」が発生する原因となっているということになります。

 

しかし、業種は違いますが、パパママ規模の自家焙煎コーヒー豆小売商売を生業として営んでいる年老いた珈琲豆焙煎屋の視点では、悲劇でも何でも無くて当たり前の現象にすぎません。

外食チェーン店は「事業」ですが、街で人気のとんかつ屋さんは「生業」です。

40年近く前のベストセラー竹内宏さんの「路地裏の経済学 」は、生業は人に依存しているビジネスだから継続性がなくて、事業は組織に依存しているビジネスだから継続・引き継ぐことができると、生業と事業の違いを説明してくれています。

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街のお医者さんや会計士さんに弁護士さん、芸能界で活躍している俳優さんや歌手の人たち、これらの職業は、特定の個人の技能に依存している生業商売です。

街で人気のパパとママで営業している「とんかつ屋」さんも、それほど街で人気が無くても何とか食べて行くだけ稼いでいるパパママ経営のコーヒー豆自家焙煎店も、特定の個人の技能に依存している生業商売です。

 

街で人気の「とんかつ屋」さんは、長い年月を費やして技術・経験・知識やお客さんとの関係を積み重ねて来て、繁盛を手に入れたわけです。

これを引き継ぐのは、誰であっても、まず無理だと思います。

簡単に引き継げるような体制ができているのなら、チェーン店となっているはずです。

飲食店チェーンとは、基本的に繁盛店のコピーを作って行くことですから。

 

ということで、街で人気の「とんかつ屋」さんのパパとママ、どちらかが仕事を続けられなくなってしまったら、例え人気店であっても店じまいするしかありません。

しかし、これは悲劇でも何でも無くて、生業商売の宿命だと思います。

 

高齢者夫婦が営んでいる街で人気の「とんかつ屋」ですが、年老いた珈琲豆焙煎屋の珈琲商売経験から、公的年金(大体が毎月5万円未満の国民年金)を補助金として商売を継続しているとは思えません。その必要が無いわけですから。

それほど繁盛していない零細パパママ経営のコーヒー豆自家焙煎店でも、その必要が無いわけですから・・・。

街で人気の「とんかつ屋」さんは、品質が高くて値段が安くても儲けられる技能・仕組みを、長年(何十年も)商売を続けている間に自然と作り上げています。

もちろん、販売価格が安いわけですからぼろ儲けはできませんが、それなりの収入は確保できています。儲けられなければ、商売が成り立たないわけですから。

 

外食チェーン店なら1000円~1500円で提供しなければ採算の取れない「トンカツ定食」を、600円~800円くらいで提供して繁盛している、高齢者夫婦が営んでいる街で人気の「とんかつ屋」さんは、外食チェーン店と比べると相当に生産性が高いのだと思います。そして、まだまだ生産性が高くできる可能性を持っています。

おそらく、街で人気の「とんかつ屋」さんは、外食チェーンのトンカツ定食の価格と同じレベルまで値上げしても、今までの繁盛を維持できると思います。

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余談ですが、外食チェーン店の成長は、零細生業規模の飲食店から移動してくるお客さんによって支えられていた面が大きかったと年老いた珈琲豆焙煎屋は考えます。

その結果、街で人気の「とんかつ屋」さんタイプの生業店だけが生き残っているのだと思います。

外食チェーン店の店舗から、街で人気の「とんかつ屋」さんにお客さんが移動することがあっても、その反対は有り得ないと思います。

この現象は、街で人気の「とんかつ屋」さんだけでなくて、年老いた珈琲豆焙煎屋が属する珈琲商売でも見られる現象です。

 

もしかしたら、これからは、飲食店・製造小売店に限定すれば、事業よりも生業が元気になって行くのかもしれません。

おそらく、「とんかつ屋の悲劇」は、事業の視点から出て来た言葉だと思います。しかし、生業と事業は全く違った商形態で、同じ基準で評価するのは無理だと思います。

くじらのビジネスとプランクトンのビジネスは、全く異なった領域のビジネスだと年老いた珈琲豆焙煎屋は考えています。

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