焙煎コーヒー豆を挽いた粉砕物(焙煎コーヒー粉)とお湯を接触させて、焙煎コーヒー粉に含まれているコーヒー成分をお湯に移動させるのが、コーヒーの抽出です。
美味しいコーヒーの醸造は、良質の焙煎コーヒー豆と良質の水に依存しています。(1杯のブラックコーヒーは、おおよそ99%の水と1%のコーヒー成分で構成されているわけですから)
それに加えて、どれくらいの量の焙煎コーヒー豆に対してどれくらいの量の水(お湯)でコーヒーを醸造するかが重要になって来ます。
焙煎コーヒー豆と水の理想的な醸造比率は、これまでの抽出の歴史における経験値から、大体決まっています。
クイックナビゲーション
コーヒーを淹れる時の理想的な醸造比率
焙煎コーヒー豆の量とコーヒーの醸造に使う水(コーヒー成分を抽出する水)の比率は、一般的に1対14~1対18くらいで、最高で1対20くらいが限度だと主張されています。
この比率を無視してコーヒーを淹れると、悲惨な風味のコーヒーが出来上がりますが、上記の醸造比率の範囲内で、コーヒーの淹れ方を試行錯誤している限り、一定レベルのコーヒーが出来上がります。
ちなみに、コーヒーを淹れる時の焙煎コーヒー豆と水の黄金醸造比率は1対17で、この比率を基準として、比率を伸ばしたり縮めたりしてコーヒーを淹れるのが正解だと考えられています。
なお、この醸造比率の測定単位は、焙煎コーヒー豆はグラムで水は㏄です。ともに、キッチンスケール(1㏄は1gですから)があれば測定可能です。
抽出濃度 | 醸造濃度
焙煎コーヒー豆を粉砕して、その粉砕した焙煎コーヒー粉から徹底的にコーヒー成分を抽出すると、焙煎コーヒー粉重量の約35%のコーヒー成分が抽出されると言われています。
しかし、そこまでコーヒー成分を抽出すると、嫌味な成分が多くなってしまって、とても飲用に堪えないコーヒーが出来上がります。
20世紀の中頃、アメリカ合衆国のコーヒー研究機関が、コーヒー成分抽出の基準となる数値を示しています。
それによると、コーヒー成分の抽出は焙煎コーヒー粉重量の18~22%(通常18%)に抑え、その時に溶出して来るコーヒー成分の溶出液(1杯のコーヒー)中の濃度は、飲み頃の範囲を1.0~1.5%としています。
焙煎コーヒー豆と水の比率と抽出濃度の関係
コーヒーの香り、酸味、苦味、甘味の完璧なバランスを見つける技術を習得する方法は、コーヒー醸造経験を積んで行くしか術が無いと言われています。
コーヒーが苦かったり、濃く感じたり、薄く感じたりと、焙煎コーヒー豆と水の比率が1対17か1対18の時に、そのように感じたならば、焙煎コーヒー粉の挽き具合やお湯の温度や抽出時間を調整することで修正できるかもしれません。
あるいは、少しだけ焙煎コーヒー豆と水の比率を変えてコーヒーを淹れることで修正できるかもしれません。
ある一定レベル以上の品質を持つ自家焙煎コーヒー豆、例えば、地域の小さなコーヒー豆自家焙煎店が売っている鮮度の良い自家焙煎コーヒー豆を使ってコーヒーを淹れるなら間違いなく修正できます。
コーヒー成分の抽出は焙煎コーヒー粉重量の18~22%(通常18%)の範囲内という、パーセンテージ抽出(抽出濃度)が適用できるわけですから。
理想的な醸造比率の見つけ方
理想的な醸造比率、ようするに自分好みの醸造比率を探し出す方法です。
実際には、好みの問題やコーヒーの淹れ方、使用するコーヒー器具、ホットコーヒーかアイスコーヒーかなどの要因に基づいて、理想的な醸造比率が変わって来ると思います。
しかし、焙煎コーヒー粉の量とコーヒー成分抽出に使う水の量の比率は、コーヒー成分と水の量の関係を知る手がかりとなります。
比率を変化させればコーヒーの香味も変わるので、その比率を変化させることでコーヒーの香味を調整制御することができます。
「コーヒー成分抽出に使う水の量と焙煎コーヒー粉量の比率」と「出来上がったコーヒーの香味プロファイル」の関係を整理整頓して置くと、コーヒーの香味を調整制御するのに役立つはずです。
まず、焙煎コーヒー粉量とコーヒー成分抽出に使う水の量の比率が1対15から出発して、水の比率を増やしながら自分の淹れ方・味覚に適した比率を探索するのが常道だと考えています。
比率で探索するのなら、焙煎コーヒー粉量とコーヒー成分抽出に使う水の量の測定単位が同じであることが必要です。
水1㏄が1gですから、どちらもグラムを測定単位とするのが合理的だと考えます。グラムで測定するのなら、必要なのは調理用のスケールだけです。
淹れたコーヒーの99%は水ですから、焙煎コーヒー粉量とコーヒー成分抽出に使う水の量の比率では、使用する水の量の比率を表す数字の方が大きくなります。
年老いた珈琲豆焙煎屋は、水の量≒コーヒー抽出液の量と考える事にしています。
ですから、焙煎コーヒー粉量1gに対して15gの水という形で、1:15というように比率を表現するのが合理的だと考えています。
例えば、焙煎コーヒー粉量とコーヒー成分抽出に使う水の量が1:15の比率になるように、600㏄のコーヒーを淹れるとすれば、焙煎コーヒー粉が何グラム必要になるかという計算方法は、『コーヒー成分抽出に使う水の量(600g)÷15=焙煎コーヒー粉(40g)』となります。
理想的な醸造比率を探索する時に留意するべき事柄
理想的な醸造比率を探索するには、できるだけ同じ環境条件でコーヒーを淹れることが重要になってきます。何回も何回も、忍耐強く同じ事を繰り返すわけですから。
年老いた珈琲豆焙煎屋の場合、以下の事柄に留意して理想的な醸造比率を探索しています。
(1)焙煎コーヒー豆を粉砕するタイミング
焙煎コーヒー粉を粉砕するタイミングは、コーヒーを淹れる直前と決めています。
できるだけ、焙煎コーヒー粉と空気の接触する時間を少なくして、コーヒーの新鮮な風味を抽出しようと心掛けています。
(2)コーヒーを淹れるのに使うお湯の温度
沸騰したお湯をコーヒー醸造に使う細口ポットに移し替えて、焙煎コーヒー粉とお湯が接触する時の温度が95度前後(プラスマイナス5度くらいの範囲内)になるように心掛けています。
(3)コーヒーを淹れる時間(醸造時間)
コーヒーメーカー、ペーパードリップや布ドリップ、サイフォン、フレンチプレスと、コーヒーの淹れ方によって変わって来ます。
コーヒーを淹れる時間(醸造時間)は、コーヒーの淹れ方によって違って来ますが、同じ淹れ方ならコーヒーを淹れる時間(醸造時間)も同じに調整するように心掛けています。
(4)測定方法の統一
1㏄の水は1グラムですから、重量測定の単位はグラムで統一します。
年老いた珈琲豆焙煎屋は、焙煎コーヒー豆は豆の姿形のままキッチンスケールを使って測定しています。水の量は、㏄単位の容量を読み取れる目盛り付サーバーを使って測定しています。
焙煎コーヒーの場合、焙煎コーヒー豆の姿形のままで測定する方法と、挽いた焙煎コーヒー粉を測定する方法があります。
正確を求めるなら後者ですが、年老いた珈琲豆焙煎屋は前者の測定方法を採用しています。
(5)焙煎コーヒー豆の姿形のままで重量を測定する理由
年老いた珈琲豆焙煎屋が、何故、スケールを使って焙煎コーヒー豆の姿形のままで重量を測定しているのか、その理由です。
焙煎コーヒー粉では無くて、焙煎コーヒー豆と水の量の比率で醸造比率を決めて置くと、コーヒーを淹れるのに必要な量の焙煎コーヒー豆だけをコーヒーミルで挽けばよいので、無駄な焙煎コーヒー粉が発生しません。
また、必要な量の焙煎コーヒー豆だけを、コーヒーを淹れる時に挽けばよいので、焙煎コーヒー粉にかかる摩擦熱も少なくなります。
ドリップコーヒーと醸造比率(水とコーヒーの比率)
ハンドドリップでコーヒーを淹れるのに必要な器具は、ドリッパー、フィルター、やかんと細口ポット、それにコーヒーを受けるサーバーです。
ドリッパーは、フィルターと焙煎コーヒー粉を保持する器具です。フィルターが布フィルターなら、ドリッパーが無くてもOKです。
年老いた珈琲豆焙煎屋は、カリタの紙フィルターとドリッパーを使ってコーヒーを淹れています。
ドリッパーについては、ブランドが異なれば、抽出プロセスに与える影響が微妙に変わってきます。
ドリップコーヒーに必要なコーヒー成分量は、エスプレッソコーヒーと比べると半分以下と少なくなります。
1gの焙煎コーヒー豆で17㏄のお湯(コーヒー成分の溶けている熱水)を抽出する、1対17の醸造比率を基本として、その比率を縮小したり拡大したりしてコーヒーの風味を調整・制御しています。
コーヒーが濃すぎると思えば、使用する焙煎コーヒー豆の量を減らして、コーヒーが薄いと感じれば、使用する焙煎コーヒー豆の量を増やして調整して行きます。
参考までに、年老いた珈琲豆焙煎屋などが「蒸らし」と呼んでいる最初(1回目)の注湯ですが、フィルターにセットした焙煎コーヒー粉層にゆっくりお湯を注ぐと、その焙煎コーヒー粉層が、スローモーションで花の咲くのを観ているように膨らんで来ます。
焙煎コーヒー粉層が花が咲くように膨らみ始めて、サーバーに抽出液が落ちてくれば、注湯を中止して30秒~1分くらい(コーヒー抽出液が落ちて来なくなるまで)放置した後、注湯を再開して何回かに分けてお湯を注ぎます。
コーヒーブルームと呼んでいるこの現象(「蒸らし」現象)は、すべての焙煎コーヒー粉から均等にコーヒー成分を抽出するのに必要不可欠の現象です。
コーヒーの種類と醸造比率
薄目のコーヒーを淹れる場合、濃い目のコーヒーを淹れる場合、ホットコーヒーかアイスコーヒーか、透過式でコーヒーを淹れるか浸漬式でコーヒーを淹れるか、紙フィルターを使ってハンドドリップでコーヒーを淹れるか、紙フィルターを使ってコーヒーメーカーでコーヒーを淹れるか、フレンチプレスを使って淹れるか、サイフォンでコーヒーを淹れるか、使用するコーヒー抽出器具(コーヒー淹れ方の種類)の違いによって、焙煎コーヒー豆と水の醸造比率が変わってきます。
以下に、年老いた珈琲豆焙煎屋の独断と偏見に基づいてですが、代表的なコーヒー淹れ方の種類と醸造比率を掲載します。
なお、焙煎コーヒー粉からコーヒー成分を抽出した焙煎コーヒー粉抽残物には、焙煎コーヒー粉重量の2倍~3倍の水が含まれて残っています。
エスプレッソ
抽出するエスプレッソコーヒーの重量が、焙煎コーヒー粉の重量の1倍~3倍の範囲にする必要があると言われています。
18gの焙煎コーヒー粉を使えば36gのエスプレッソコーヒーを抽出する、1対2の醸造比率が一般的だと言われています。
その時の抽出時間は、25秒~35秒が良いと言われています。
フレンチプレス
浸漬式のコーヒー醸造方法で、焙煎コーヒー粉1gで15㏄の水を使う1対15の醸造比率から、焙煎コーヒー粉1gで18㏄の水を使う1対18の醸造比率の範囲でコーヒーを淹れるのが一般的だと言われています。
薄いコーヒー
薄いコーヒーが好きなら、焙煎コーヒー粉と水の醸造比率を1対16~1対18が良いと言われていのす。
焙煎コーヒー粉18gで、300㏄くらいのコーヒーを醸造します。
一般的なコーヒー
焙煎コーヒー粉と水の醸造比率が、1対13~1対15くらいが一般的な濃さのコーヒーになります。
20gの焙煎コーヒー粉を使って、300㏄のコーヒーを醸造します。
濃いコーヒー
ストロングタイプのコーヒーが好きなら、焙煎コーヒー粉と水の醸造比率1対10~1対12くらいがおすすめです。
30gくらいの焙煎コーヒー粉を使って、大体300㏄のコーヒーを醸造します。
年老いた珈琲豆焙煎屋の場合は
年老いた珈琲豆焙煎屋の朝食は、コーヒーとトーストパンとサラダとハムエッグという、喫茶店のモーニングサービスと同じ代物です。分量は、少し多めですが。
夫婦2人だけの朝食で、自家焙煎コーヒー豆の味見も兼ねてコーヒーを飲んでいます。
淹れるコーヒーの量は、36gの自家焙煎コーヒー豆を使って500㏄~550㏄くらいの量のコーヒーを醸造すると決めています。
ということで、年老いた珈琲豆焙煎屋の焙煎コーヒー豆と水の量の醸造比率は、大体1対15くらいです。
焙煎コーヒー豆と出来上がるコーヒー(水)の醸造比率は、どれだけの焙煎コーヒー豆とどれだけの水(お湯)を使ってコーヒーを淹れるか(醸造するか)の影響を受けています。
36gの焙煎コーヒー豆を使ってコーヒーを淹れる場合と、18gの焙煎コーヒー豆を使ってコーヒーを淹れる時とでは、醸造比率が変わって来ます。
1杯のコーヒーを醸造する(淹れる)時に使う焙煎コーヒー豆の量よりも、3杯~4杯のコーヒーを醸造する時に使う焙煎コーヒー豆の量が少なくなります。
ちなみに、焙煎コーヒー豆と水の量の醸造比率を測定する時の単位は、スケールを使って測定する「重さ」だと年老いた珈琲豆焙煎屋は考えています。