昭和の頃に開業して、現在(2018年)も営業しているパパママ経営の喫茶店、何故、30数年~50年近く営業を続けていられるのかというと、その秘訣はスタッフの質(orパパとママの人柄)に依存する割合が高いような気がします。
五木寛之が1968年(昭和43年)に発表した小説「ソフィアの秋」で、主人公お気に入りの喫茶店ミネルバ茶房を、「店もまた人である、・・・ミネルバ茶房は、とりもなおさず、そこの店主であるところの影山真陽氏の、人柄そのものの象徴といえる店」と紹介しています。
自分好みの(自分が美味しいと思う)、煎りたて新鮮、品質の良い最高の焙煎コーヒー豆を使って、これまでに培ってきた技術を駆使して最高のコーヒーを淹れるのは、パパママ規模の喫茶店ビジネスの基本だと思います。しかし、それだけで喫茶店が繁盛するはずが無いとも考えています。
お客さんが小規模な喫茶店に求めているのは、商品(コーヒーなど)の品質が40%、スタッフの接遇対応が60%だとも言われていて、フレンドリーなスタッフとの触れ合いを求めているお客さんが数多くいるのだと思います。
スターバックスコーヒーやドトールコーヒー、ちょっと毛色が違いますがこめだ珈琲店などの大規模喫茶店チェーンのビジネスモデルは、基本的に、成功した独立店舗の喫茶店経験を複製するコピービジネスです。
そして、大半の喫茶店チェーンは、お客さんが気楽にリラックスできる場所を提供することで高い評価と人気を得ているのだと思います。
コーヒー生豆は農作物です。同じ農場で収穫されたコーヒー生豆でも、収穫年度が違えば生育環境が異なっているわけですから、出来不出来が発生します。
焙煎コーヒー豆は加工食品ですから、焙煎加工後、日にち(時間)が経過すれば、鮮度が衰えて品質が劣化して行きます。また、焙煎の仕方の違いでも、品質が異なります。
パパママ規模の小さな喫茶店なら、その時々で臨機応変に、ロースター(焙煎コーヒー豆の業務卸業者)や自家焙煎コーヒー豆小売店など、数ある珈琲屋さんから気に入った最良の焙煎コーヒー豆を自由自在に購入することができます。
しかし、大手喫茶店チェーンは、使用する焙煎コーヒー豆を臨機応変に選択することは出来ません。
全店共通のマニュアルがあるわけですから、小回りが利かないはずです。
提供する商品の品質レベルが変われば、お客さんはすぐに気が付くはずです。
独立系の小規模な喫茶店が、近隣の喫茶店チェーンの店舗に経営を圧迫されているのが地域の喫茶店市場です。
しかし、喫茶店チェーンと比べて設備や立地で劣っているとしても、独立系の小規模な喫茶店は、コミュニティースペースとしての役割とコーヒーを含めた商品の品質という、喫茶店経営における2つの主要な要件だけで勝負できると考えています。
珈琲・喫茶市場ですが、毎年毎年拡大していて、特に、ここ何年間かは急激に拡大しているようにも感じられます。
ですから、この市場に参入して来るプレーヤーも、毎年毎年増えていて競争が激しくなって来ているようです。
競争が激しくなって来ているわけですが、基本的にお客さんの利益を考えた筋肉質の経営を心掛けていれば、たとえ大手中堅喫茶店チェーンの仁義なき圧迫を受けたとしても、その圧迫に対抗できると考えています。
ということで、大手中堅喫茶店チェーンとの差別化対策として、生産用小型コーヒー豆焙煎機を駆使して丁寧に時間を費やして、この道30年の老職人が焙煎する煎りたて新鮮な香りの良い焙煎コーヒー豆を含めて、幾つかの自家焙煎コーヒー豆店の焙煎コーヒー豆を周期的に使ってみるという方法も有りだと思います。
大手中堅喫茶店チェーンとの差別化を模索しなければ、個人経営の小規模な喫茶店は、大手中堅喫茶店チェーンというクジラのプランクトンになってしまうかもしれません。
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