
― なぜ自家焙煎コーヒーは高いのか?どうやって信頼をつくるのか?―
コーヒー豆を焙煎していると、ときどきこんな声を耳にします。
「どうして自家焙煎のコーヒー豆って、スーパーのより高いんですか?」
そのたびに、私は少しだけ胸の奥が温かくなります。
値段の理由を知ろうとしてくれるということは、こちらの仕事に興味を持ってくれている証拠だからです。
今日は、小さなコーヒー豆焙煎店を営んでいる私が、日々感じていることを少し書いてみます。
(1)レギュラーコーヒーとクラフトコーヒーは、そもそも市場がちがう
世の中のコーヒーは、大きく分けると二つの世界に分かれています。
ひとつは、スーパーでよく見かける「レギュラーコーヒー」。
もうひとつは、小さなコーヒー豆焙煎店が少量ずつ丁寧に作る「クラフトコーヒー」。
レギュラーコーヒーは、巨大な工場で大量に作られ、広い市場へ流れていきます。
一方、クラフトコーヒーは、町の片隅の小さな店で、焙煎機の前に立つ人間の手で作られます。
同じ「焙煎コーヒー豆」でも、立っている場所も、向き合っているお客さんも、まったく違います。
(2)原料の値段がそもそも違う
クラフトコーヒーの原料は、主にスペシャルティーコーヒー生豆。
生産者が丁寧に育て、品質を高めるために手間を惜しまない豆です。
一方、レギュラーコーヒーは、世界の相場で値段が決まるコモディティーコーヒー生豆。
つまり、スタート地点からしてこうです。
スペシャルティーコーヒー → 高い
コモディティーコーヒー → 安い
クラフトコーヒーの売値が高くなるのは、ある意味で当然のことなのです。
(3)作り方にも大きな差がある
クラフトコーヒーは、少量の豆を手作業で焙煎します。
火のまわり方、豆の音、香りの変化。
焙煎人は五感を総動員して、豆の声を聞きながら仕上げていきます。
レギュラーコーヒーは、工場で大量生産されます。
機械が一気に焙煎し、コストを抑えながら安定した品質を保ちます。
どちらが良い悪いではなく、目的が違うのです。
ただ、手作業で少量を焙煎するクラフトコーヒーは、どうしてもコストが高くなります。
(4)だからクラフトコーヒーは値段が高くなる
原料も高い。
作る手間も多い。
生産量も少ない。
その結果、クラフトコーヒーの価格はレギュラーコーヒーより高くなります。
でも、ここからが本当に大事なところです。
(5)「高いけど、その価値がある」と思ってもらうこと
クラフトコーヒーは、ただ高いだけでは買ってもらえません。
「このコーヒーは高いけど、理由がある」
「この店のコーヒーなら信頼できる」
そう思ってもらうためには、焙煎人が日々積み重ねるべきものがあります。
焙煎の技術を磨く
コーヒーの知識を深める
抽出の勉強も続ける
生産者の思いや豆の背景を伝える
店の広報で丁寧に説明する
技術 × 学習 × 発信。
この三つがそろって、はじめて「信頼」が生まれます。
(6) 信頼ができれば、クラフトコーヒーは売れる
クラフトコーヒーは、「おいしい」だけでは足りません。
どんな豆を使っているのか
どんな思いで焙煎しているのか
なぜ値段が高いのか
こうしたことを丁寧に伝えることで、消費者は納得し、信頼してくれます。
信頼ができれば、クラフトコーヒーはちゃんと売れるようになります。
それは、私自身が長い時間をかけて実感してきたことでもあります。
(7)まとめ ― 小さなコーヒー豆焙煎店が大切にしていること
クラフトコーヒーは、
高品質の豆
手作業の焙煎
小さな市場
という特徴を持つため、どうしても値段が高くなります。
だからこそ、
技術・知識・経験・広報
この4つを積み重ねて、価値を伝えていくことが大切です。
小さな焙煎店のコーヒーが、誰かの一日の中でそっと寄り添う一杯になれたら。
そのために、今日も焙煎機の前に立っています。

