コーヒーの世界は、いつも遠い国の天気や政治に揺さぶられながら動いていきます。
2026年の初夏、相場の空気は少しひんやりしてきました。
5月の世界の生豆相場(ICO 複合指標)は、1kgで1100円くらい。
前月から約4%の下落です。
数字だけを見ると「下がったんだな」と思うかもしれません。
でも、その背景には“コーヒーという農作物の物語”が静かに流れています。
ブラジルの空が明るすぎると、相場は下がる
今年のブラジルは、どうやら“当たり年”らしい。
CONAB(ブラジル食糧供給公社) が発表した 2026/27 クロップの見通しは 過去最高の 約6700万袋。
アラビカに至っては前年比 約30% の大幅増産。
農作物の世界では、豊作は必ずしも喜びだけを運んでくるわけではありません。
「たくさん採れそうだ」と市場が感じた瞬間、価格は静かに下へ向かい始めます。
まるで、収穫前から未来の豆が市場に並び始めるように。
世界のコーヒーが増えるという安心感
ブラジルだけではありません。
世界全体でも、今年は生産量が前年比 約10% 増えるという予測が出ています。
まだ実際の輸出量はタイトで、4月の世界輸出は前年比マイナス2%。
それでも市場は「これから増える」と読んでいる。
未来の安心感が、現在の価格を押し下げる——相場とは不思議なものです。
ロブスタだけが逆風に立ち向かう
品種別に見ると、アラビカは軒並み下落。
一方で、ロブスタだけがプラス1% と小さく上昇しています。
ロブスタは、いま世界的に“底堅い”存在です。
アラビカが高値で揺れる中、ロブスタをブレンドに取り入れるロースターが増えているのも理由のひとつだと思います。
それでも、急落しない理由
「下がっている」とはいえ、相場は崩れてはいません。
むしろ、どこか踏ん張っているようにも見えます。
でも、市場の認証在庫は依然として低水準(アラビカ在庫は48万袋)、エルニーニョの影響で、ブラジルの開花期に不安要素が残ります。
相場は、上にも下にも行きたがっている。
そんな“迷い”の中にいるようです。
和歌山の小さな焙煎店から見える景色
ここからは、エカワ珈琲店の視点になります。
● アラビカは「高値からの調整局面」
2025〜2026年の高騰を経て、ようやく落ち着き始めました。
キロ1100円台は歴史的に見ればまだ高い水準ですが、持続的な供給という面を考慮するなら、これくらいの価格なら許容範囲です。
● ロブスタは底堅く、存在感が増している
アラビカより下がりにくい。
ブレンドの幅を広げる選択肢として、ロブスタの価値が見直されつつあります。
● 仕入れは“急がず、しかし様子見しすぎない”
2026年後半、ブラジルの実収量が確定するまで相場は揺れ続けると思っています。
ただ、在庫が少ないため、何かの拍子に反発する可能性もあります。
まるで、風待ちをしながら帆を張るタイミングを探るような時期です。
コーヒー相場は、世界の呼吸
コーヒーの相場は、遠い国の雨や風、政治や物流の影響を受けながら、まるで地球の呼吸のように上下します。
焙煎店としては、その呼吸のリズムを感じながら、仕入れのタイミングを見極めていくしかありません。
2026年初夏の相場は、「下がりつつも、どこか落ち着かない」、そんな揺らぎの中にあります。
この揺らぎをどう読むか——
それが、今年の焙煎屋家業の面白さでもあるのかもしれません。
【参考】
全協海外情報578号 2026年6月17日 全日本コーヒー協会

