年老いた珈琲豆焙煎屋のブログ

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東浩紀さんのゲンロン戦記、街の社長さんが失敗経験満載で経営体験を語る本、小さな商売の思想・哲学書

久しぶりに東浩紀さんの著作を購入しました。久しぶりに購入したと言っても、12年前か13年前、NHK出版発行の「東京から考える、格差・郊外・ナショナリズム」 を一冊だけ読んだことがあるだけですが。

当時、50代半ばだった年老いた珈琲豆焙煎屋でも、東浩紀さんは、マスコミによく登場する若手論客だと知っていました。だから、「東京から考える、格差・郊外・ナショナリズム」を書店でたまたま目にして購入したわけです。

 

今回購入した「ゲンロン戦記」は、「東京から考える、格差・郊外・ナショナリズム」とは、全く趣きの異なった読みやすくて面白い本で、2時間ほどで一気読みしました。

「ゲンロン戦記」は、街の小さな会社「株式会社ゲンロン」の経営者東浩紀さんが、数々の失敗を重ねながら何んとか踏みとどまって、少しずつコツコツと経営規模を拡大して行く物語で、失敗経験満載の経営体験が語られている本です。 

ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる (中公新書ラクレ)

ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる (中公新書ラクレ)

  • 作者:東浩紀
  • 発売日: 2020/12/11
  • メディア: Kindle版
 

 

2010年に38歳で株式会社ゲンロンという小さな会社を起業して、49歳になった2020年までの10年間に渡る、小さな会社の社長が経験した山あり谷ありの経営体験が凝縮している本ですから、街の社長さんが読んでも、珈琲の生業商売をしている街の珈琲屋さんが読んでも、自分たちのこれまでの商売の軌跡と重なる部分が多々あるので、面白くて何か得るところのある本だと思います。

 

ゲンロン戦記の大半は印象に残っているのですが、年老いた珈琲豆焙煎屋の独断と偏見による解釈かもしれませんが、特に印象に残っている事柄を3つだけ書き出しました。

「観客を啓蒙して、知の観客を増やす」。観客とは、お客さんの事だと理解しています。この経営戦略は、サードウェーブコーヒーの営業戦略そのものです。

サードウェーブコーヒーの営業戦略ですが、スペシャリティーコーヒーを体験してもらって、スペシャリティーコーヒーの知識・技術を取得してもらうという啓蒙活動が中心になっています。

 

経営危機に陥った株式会社ゲンロンが生き残れたのは、ゲンロンカフェという出版以外の黒字事業が存在していたから・・・。やはり、複業という保険は大切だと思います。

ゲンロンカフェでのイベントを、ニコニコ動画で生放送を有料配信、都度課金が1000円、見放題プランは月額9800円に設定、ニコニコ動画の生放送の月平均視聴者数は、2013年に配信開始した最初の頃は200人前後、それが徐々に増えて行って、2019年の月平均視聴者数は400人前後となっているようです。

 

インターネットの力を信じることで始まったプロジェクトですが、起業してからは、ネットの力が信じられなくなっていった。

2000年代後半、オンラインに期待して商売にオンラインを導入した商売人たちの大半が、2010年代に入った頃には感じていたはずです。

株式会社ゲンロンは、オンラインをオフラインへの入り口として活用しています。

 

他に、「地道にコツコツと積み上げて行く」、「ページビューやリツイートの数に抗う」、「商品と貨幣の交換」等々、生業商売を営んでいる年老いた珈琲豆焙煎屋が大変面白いと感じる話が満載されています。

街の社長さんや、街で生業商売を営んでいるコーヒー豆自家焙煎店の店主にとっては、読んで損はしない本だと思います。

「小さな商売の思想・哲学書」、この本を読み終えたあとの年老いた珈琲豆焙煎屋の感想です。思想・哲学なくして、商売は成り立たないわけですから。