コーヒーや紅茶を冷やすと白く濁るのは、コーヒーや紅茶に含まれているポリフェノール成分とカフェインが結合して、その結合物が析出してくるからだと考えられています。
紅茶の白濁は、その紅茶が良質だというあかしですが、アイスコーヒーの白濁は欠陥だと考えられています。
紅茶の白濁
熱湯抽出した紅茶は、時間が経過して冷めて行くと徐々に白く乳濁してきます。この現象を紅茶のクリーミングと呼んでいます。
紅茶の場合、白く濁る(乳濁する)クリーミング現象は、良質の紅茶の代名詞になっています。理由は、タンニンとカフェインの多い良質の紅茶ほど乳濁する(白く濁る)からです。
高分子のタンニンは塩基と結合し沈殿するのですが、紅茶のタンニンはテアフラビンという物質で分子量が小さいので、紅茶が熱い時にはカフェインとの結合物の溶解度が高いので溶けていますが、冷めて来るとお互いに会合(かいごう)して大きなミセルを作ります。
そして、それとともに溶解度が減少するので析出して来て白く濁ると考えられているようです。
アイスコーヒーの白濁
アスイコーヒーを作るときに、氷にコーヒーの熱湯浸出液を注ぐと、透明なアイスコーヒー になります。反対に、コーヒーの熱湯浸出液に氷を入れると白い濁りが発生します。
原因は、クロロゲン酸やそれから形成される褐色色素が、カフェインと複合体を形成するからだと言われています。
氷にコーヒーの熱湯浸出液を注いで急冷した場合、複合体が会合することなく分散して濁りが生じないのですが、コーヒーの熱湯浸出液に氷を入れて徐々に冷却すると、複合体の会合が進行するので、溶解度が低下して析出が発生し濁ると考えられています。
アイスコーヒーの白濁の原因物質
クロロゲン酸やそれらから形成された褐色色素とカフェインの複合体の構造は、紅茶のクリーミングと同じように、プリン環とコーヒー酸残基との疎水結合によるスタッキング複合体が形成されるからだと言われています。
この濁りの生成が、自動販売機で低温保管されているブラックコーヒーの品質低下や、濃縮したコーヒーシロップの製造時や保存の障害になっていると考えられています。
ちなみに、カフェインレスコーヒーの場合、この現象は発生しないようです。
コーヒーのポリフェノール
コーヒーの生豆に含まれているポリフェノール成分の大半が、クロロゲン酸類だと報告されています。
クロロゲン酸類は、カフェ酸とキナ酸に、いくつかのカフェオイル基が結合したカフェ酸誘導体で強い抗酸化作用を持っているので、活性酸素の消去や抗変異原性などの機能性があると言われています。
その機能性は、キナ酸に結合するカフェオイル基が多いほど高くなる傾向にあるとされています。
ちなみに、クロロゲン酸類は、フェノールカルボン酸類の化合物です。
参考までにですが、エカワ珈琲店(店主は年老いた珈琲豆焙煎屋)のコーヒー豆焙煎プロセスにおいては、ポリフェノールによる褐変現象を利用することで、積極的に焙煎コーヒー豆の品質向上を目指しています。
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