ハンバーガーをカスタマイズできるマクドナルドの店舗、Create Your Taste に注目が集まっています。
マクドナルドCreate Your Taste に入店すると、注文用のタッチパネルが置かれていて、注文は全てそのタッチパネルを通して行うので人の手間いらずというシステムが採用されているとのことです。
(マクドナルドのホームページより引用)
お客さんは、タッチパネルを操作して、パティーやチーズの量、具材の数や量を調整して、自分好みにカスタマイズしたハンバーガーを受け取ることができるシステムになっているのだと思います。
ヘンリフォードが大量生産を開始した自動車は、すべて黒色塗装の自動車でした。
黒色の塗装が、他の色で塗装するよりも約4時間乾燥スピードが速いという理由で、黒色の塗装が採用されたと伝えられています。
黒色塗装の自動車だけを大量生産することで、自動車製造ラインの生産性が向上して、より低コストで自動車を生産することが出来たという話は知られています。
それに、生産するのは黒色塗装の自動車だけですから、在庫切れという問題に悩まされることも無かったということです。
その後、消費者の要求に応じるというカタチで、塗装の色の種類も増えて行きました。
自動車の塗装色だけではなくて、例えば、台所の食器棚や旅行プラン、靴、ソフトウェアー、既製服などなど、大量生産・大量消費型の商品・サービスのほとんどが、カスタマイズ化の方向を歩んで来たのだと思います。
大量生産・大量消費型の商品・サービスのカスタマイズ化に要した費用ですが、価格に転嫁されていないように見えます。しかし、そのコストは、価格の中に組み込まれているのだと思います。
大量生産・大量消費型の商品・サービス価格の相当部分は、企画立案や試作品の製造などのカスタマイズ化に伴うコストが占めているのだと思います。
大量生産している靴は約3ドルで作ることもできますが、特注品(カスタムメイド)の靴を作るには200ドルくらいのコストがかかるわけですから。
世界最大のレストランチェーンであるマクドナルドの生産性の頂点は、カスタマイズ化を抑えた限定メニューの導入によって達成されて来たのだと思います。
メニューが限定されているから、受注してから短時間で商品を提供することができるのだと思います。
そのマクドナルドですが、メニューを限定してコストを抑えるというビジネスモデルに疑問を持ち始めているようです。
何故なら、マクドナルドが、低コストの大量生産プロセスと柔軟なパーソナライゼーションを組み合わせたシステム(マスカスタマイゼーション)に投資を開始しているからです。
マクドナルドのマスカスタマイゼーションは、アルゴリズムシステムとロボットを活用して、消費者の特別注文に応じるという方向で進んでいるようです。
アルゴリズムシステムのソフトウェアーとロボットの開発に相当程度の投資が必要だとしても、魔法の杖が作用すれば、そのコスト負担は限りなくゼロに近づきます。
大量生産・大量消費(大規模・中規模)ビジネスにとって、カスタマイズ化の風の流れを無視することは、「退場」を意味しているのだと思います。
マクドナルドの投資行動を見ていると、大量生産・大量消費ビジネスの未来は、マスカスタマイゼーションの活用によって開けていくのかもしれないと、年老いた珈琲豆焙煎屋は考えます。
マクドナルドがロボットとソフトウェアーを活用して、これまでと同じような価格とスピードでカスタマイズしたハンバーガーを提供して、これまでと同じか、それ以上の収益を獲得できるかもしれません。
マスカスタマイゼーションビジネスは、ロボットとソフトウェアーに投資をして、人手に要するコストを最小限に抑えるビジネスモデルなのだと思います。
大規模・中規模ビジネスで、マスカスタマイゼーションビジネスにシフトしないで、ブラック企業的なビジネス手法を用いて生産性を上げようとするのは、時代の荒波に逆らって泳いでいることを意味しているのだと思います。
理論的に、大量生産・大量消費ビジネスを営んでいる事業者でも、特別注文の商品やサービスに対応することは可能なのだと思います。しかし、それに伴うコストは高くなります。
その高くなるコストの全額を消費者に負担してもらうのは、現実的に不可能ですから、利益を減らすか、赤字覚悟で特別注文に対応するか、ブラック企業的なビジネスモデルを採用するかしか無いのだと思います。
大量生産・大量消費ビジネスは、商品(orサービス)を大量に作って、できるだけ安い価格で販売して利益を得るというビジネスモデルですから、価格に依存する割合の高いビジネスなのだと思います。
ですから、『特別注文(カスタマイズ化)に対応すること=利益の圧迫』を意味していたのだと思います。
(ブラック企業では、利益の圧迫=社員の酷使を意味しているのだと思います。)
現在(2016年)、マスカスタマイゼーションという概念の実用化が始まっていて、『特別注文(カスタマイズ化)に対応すること=利益の圧迫』という部分が取り除かれようとしているのだと思います。
食の仕事に従事しているエカワ珈琲店も、喫茶・レストランチェーンで始まっているマスカスタマイゼーションの流れを興味を持って眺めています。