その昔(20世紀の頃)、緑茶や紅茶に含まれているタンニンが、コーヒーにも含まれていると説明されていたこともあります。
21世紀に入ると、緑茶や紅茶に含まれているタンニンと、コーヒーに含まれているタンニンは、まったく異なった物質だと説明されるようになりました。
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タンニン
タンニン(tannin)という言葉は、皮なめす能力を持つ(tanning)植物成分をタンニンと呼んでいたのに由来すると、「食品の変色の化学/中林敏郎・木村進・加藤博通編著」に記してあります。
厳密には渋味(収斂味)があり、蛋白と結合して沈殿を生ずる無色で比較的高分子のポリフェノール成分がタンニンにあたる。しかし、一般には、渋味の無い低分子のものも含めて植物組織の褐変の原因となる無色のポリフェノール成分の総称として用いられることが多い。
ちなみに、タンニンは、加水分解タンニンと縮合型タンニンに分類されます。
加水分解タンニン(hydrolysable tannin)
以下は、「食品の変色の化学/中林敏郎・木村進・加藤博通編著」の引用です。
酸、アルカリ、または酵素タンナーデで加水分解されるもので、数個のフェノールカルボン酸や糖やフェノールなどの水酸基とエステル結合している。
このタンニンは、加水分解で没食子酸(gallic acid,G)のみを与えるガロタンニン(gallotannin)と、ヘキサヒドロキシジフェニール(hexahydroxydiphenyl, HHDP)をもち、・・・・・
コーヒー酸とキナ酸のエステルであるクロロゲン酸やイソクロロゲン酸などをガロタンニンに含めることもある。
縮合型タンニン(condensed tannin)
これも、「食品の変色の化学/中林敏郎・木村進・加藤博通編著」からの引用で。
酸と加熱しても加水分解されずに赤褐色不溶性の重合物であるフロパフェン(phlohaphene)を生じる。主にカテキン類が縮合したプロアントシアニジン(proantthocyanidin)がこれに相当し、食品のタンニンの大部分がこれに属する。
コーヒーのタンニン
コーヒーのタンニンと呼ばれているのは、クロロゲン酸類と呼ばれている物質だとエカワ珈琲店は考えています。
コーヒーのタンニンと呼ばれている物質は、緑茶に含まれているカテキンなどの一般的にタンニンと呼ばれている物質と異なっていて、皮を柔らかくする力などのタンニン活性はありません。
緑茶や紅茶などに含まれているタンニンは、高分子のポリフェノール化合物で、渋みのある物質ですが、コーヒーのタンニンとされている成分は、クロロゲン酸類と呼ばれている物質で、ほとんど渋味を持っていません(持っていても弱い渋味です)。
コーヒーのタンニンはクロロゲン酸
クロロゲン酸類は、低分子で酸味と弱い苦味のある物質ですが、その中には、弱い渋みを持っているものもあるようです。(例えば、ジカフェオイルキナ酸)
カフェインと結合して緑色になるので「クロロゲン」と呼ばれていて、コーヒー豆を焙煎加熱することで、その量が半減して酸味が減少すると言われています。それが、焙煎時間が長くなると、酸味が減少する理由の一つだろうとエカワ珈琲店は考えています。
ちなみに、一杯のコーヒーの苦味成分の中で、コーヒーの苦味に最も影響を及ぼしているのが、クロロゲン酸起源のクロロゲン酸ラクトン とフェニルインダン類だと考えています。特に、ビニルカテコールオリゴマー(フェニルインダン類)の苦味が強力ですから、この成分が多くなるとコーヒーの酸味を覆い隠してしまうのだと推察しています。
紅茶とタンニン
紅茶の発酵過程では、茶葉に含まれるタンニン成分のカテキン類が、酵素酸化して紅茶特有の赤色が出来上がります。ですから、紅茶の茶葉には、20~25%とタンニン含量の多いアッサム種が適しているとされています。
紅茶特有の赤色は、橙赤色のテアフラビン(theaflavin)と、それを重合した赤褐色のテアルビジン(thearubidin)で作られていて、テアフラビンの含まれている量が多いほど紅茶の品質が良いとされています。
熱湯で抽出した紅茶の浸出液を放置して自然に冷やすと、冷えるに従って次第に乳濁してくる現象をクリーミングと呼んでいて、タンニンとカフェイン含量の多い良質の紅茶ほど乳濁するとされています。
乳濁する理由です。以下は、「食品の変色の化学/中林敏郎・木村進・加藤博通編著」からの引用です。
一般に高分子のタンニンは塩基と結合して沈殿するが、紅茶の場合はテアフラビンの分子量が比較的小さいので、カフェインとの結合物の溶解度が熱い時には溶けているが、冷えると相互に会号して大きなミセルを作るとともに溶解度が減少して析出し濁ってくる。