ヤフーニュースのトピックを見ていたら、「成長戦略目玉に起業大国」という見出しが目にとまりました。
「ベンチャー企業が経済を牽引している米国と比べ、日本の起業力は劣っている」ということで、「起業大国」の実現を成長戦略の目玉施策にしようと考えているとの報道です。
現在のアメリカ経済を牽引しているのは、スモールビジネス、マイクロビジネスだということは、アメリカ発のブログ記事やコーヒー飲食ビジネス関係のニュースサイト、ローカルニュースのサイトを訪問すれば理解できます。
おそらく、アメリカでは、相当に広範囲のビジネス分野で、スモールビジネス、マイクロビジネスの活躍できる環境が整っているのだと思います。
年老いた珈琲豆焙煎屋は、20年以上も前に脱サラして、エカワ珈琲店という屋号の自家焙煎コーヒー豆小売専門店を営んで来ました。
その間、競合相手はというと、ほとんどの場合、大手コーヒー企業でした。
オフィスへのコーヒー豆の販売でも、家庭向けコーヒー豆の店舗での小売販売でも、飲食店向けコーヒー豆の卸販売でも、そのほとんど全ての分野で、エカワ珈琲店が開拓したお客さんを大手のコーヒー企業に奪われるという形での競合が存在していました。
日本のコーヒー業界には相当に強力な独占が存在していて、その結果として、公正な競争が存在していないのかもしれないと考えることもあります。
エカワ珈琲店は何とか生き残っているのですが、コーヒー業界の強権的な独占資本に成長の機会を力づくで摘み取られたのは確実だと、2014年の現時点では考えています。
もしかしたら、相当に広範囲な分野のビジネスにおいて、コーヒー豆を販売するビジネスと同じような強権的で独占的な競合が存在しているのかもしれません。
組織の規模や資金力を背景とする競合相手に、スモールビジネスやマイクロビジネスが打ち勝つには、独占を監視する公的機関の活性化・意識改革、公共調達においては地元のスモールビジネス、マイクロビジネスを優先するというような公的・社会的なバックアップが必要だと思います。
21世紀に入ってからのアメリカのコーヒー業界ですが、サードウェーブコーヒーということで、小規模零細のコーヒー豆焙煎屋ビジネスが活況を呈しています。
アメリカは法律的に強引で独占的な商法が許されない国ですから、出る杭を打つ的な商売が通用し難い国だと思います。
日本のコーヒー企業がアメリカに進出して、成功を収めたという話を聞いたことがありません。
音楽の世界で挫折した青年が、アメリカ西海岸の都市の近郊のガーレージで、中古の焙煎機でコーヒー豆を焙煎して、近くのファーマーズマーケットでコーヒー豆の小売販売と移動式のコーヒースタンドを営み始めたのが2002年のことでした。
その後、コーヒー好きの消費者から好評を得て、サンフランシスコに自家焙煎コーヒー豆の喫茶店を開店します。
その喫茶店も行列のできる喫茶店となって、アメリカで数店舗を展開しているだけの自家焙煎コーヒー豆の喫茶店が、2014年の今年、10億円以上の資金を集めて日本のコーヒー市場をうかがっているというような小さな成功物語が数多く存在しているのが、アメリカのコーヒー業界です。
日本でも、1960年代、1970年代には、そういう物語が多数存在していたのだと思います。
1960年代、1970年代の日本経済を牽引していたのは、現在のアメリカ経済がそうであるように、スモールビジネス、マイクロビジネスだったと考えます。
その後、日本のスモールビジネス、マイクロビジネスですが、独占的で強権的なビジネスにその市場を強奪されることで、その数を減少させていきます。
そして、スモールビジネス、マイクロビジネスの減少が日本経済から活力を奪ってしまったのだと思います。
人間の人生に与えられている時間は、それほど多くはありません。
無限の時間を持っているわけではありませんから、どうしてもリスクに敏感になって、冒険を避ける傾向があります。
1960年代、1970年代には、リスクでも冒険でもなかったマイクロビジネスですが、21世紀の現在の日本では、社会制度的にも、金銭的にも、相当なリスクが存在する危険なビジネスになってしまっています。
効率化の名の下に、社会制度的に、スモールビジネスやマイクロビジネスを切り捨てた結果なのかもしれません。
スモールビジネスやマイクロビジネスが、その国、その地域の経済に活気をもたらすのは、歴史的にも証明されています。
社会主義経済を採用していた国々が、どのようになったかを研究すれば、すぐに理解できることだと思います。
ですから、現在のアメリカの地方都市には活気があって、スモールビジネス、マイクロビジネスの減少している日本の地方都市には活気が無いのかもしれません。
でも、「成長戦略は起業大国」ということですから、政府や中央官庁は、スモールビジネス、マイクロビジネスの重要性を相当に意識し始めているのだと思います。
そこで、脱サラしてから22年間マイクロビジネスを営んできて、マイクロビジネスの悲哀を感じ続けてきた経験から、年老いた珈琲豆焙煎屋が希望する「起業大国を目指すべき政策」を書き出してみました。
起業大国を目指すのに、それほど財政的な負担を必要としないのだと思います。
アメリカ並みの独占に対する監視体制と損害賠償の制度を構築することと、マイクロビジネスを営む自営業者に対する税制的な優遇と、地方公共団体やその外郭団体の調達業務をスモールビジネスやマイクロビジネス優先にするだけで、ある程度の成果を期待できると思います。
10年ほど前、和歌山市役所の産業担当の主管課に、東京資本のオフィスコーヒー専門会社が最新のコーヒー抽出器具を貸与してくれるからという理由だけで取引を打ち切られた思い出があります。
和歌山市のスモールビジネス、マイクロビジネスですが、この10年間で相当数が消滅してしまったわけですから、役所に勤めている人たちの意識も重要な部分を占めているかもしれません。